第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター3

予防理学療法4

2015年6月7日(日) 10:50 〜 11:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1071] 健康増進事業に長期参加された地域高齢者の体力変化と理学療法士の関わり

今北英高1, 福本貴彦1, 熊谷有希子2, 渦見美代子2, 亀井雅史2 (1.畿央大学大学院健康科学研究科, 2.大和高田市社会福祉協議会)

キーワード:生活期高齢者, 縦断的調査, 理学療法士の介入のあり方

【はじめに,目的】総務省の発表によると,我が国の総人口は3年連続で減少しているにも関わらず,65歳以上の高齢者の割合は25.1%となり,初めて総人口の25%を超えた。高齢社会が進行している中で,高齢者は地域社会で出来るだけ自立した生活を維持し,さらに社会参加することが求められている。地域包括ケアシステムは,尊厳ある自立を社会が重層的に支援する姿を理念としており,高齢者にとって,生活を改善・サポートするリハビリテーション理学療法が必要となる。本研究の目的は地域の在宅高齢者を対象に理学療法士,運動指導士,その他の事業スタッフが連携し,介入することで長期参加された高齢者がどのように変化したか,またその関わりについて検討した。
【方法】対象者は奈良県大和高田市に在住する高齢者(開始時68歳から93歳)で,中枢神経疾患や整形外科疾患の既往歴を持ちながらも,本人もしくは家族により通所可能であった高齢者を対象とした。調査機関は,平成19年1月から平成24年12月で,3年以上(3年6か月から6年間)継続参加された6名の参加者を縦断的に調査した。身体機能測定は,年に2回,2月と7月に実施し,その項目はBMI,握力,Time up and go test,努力性歩行時間,両側膝伸展筋力とした。対象者は,週に1回通所し,準備体操の後,個別に設定された負荷量にて筋力トレーニングマシーンや自転車エルゴメーター等をスタッフおよび運動指導士の指導の下,約90分間実施した。理学療法士は2週間に1度の割合で参加し,別のプログラムを考案して,その都度実施した。
【結果】BMIにおいて,参加者のうち68歳の整形外科疾患を既往する男性1名のみが23から26.2に上昇したが,他の5名は参加期間中,変動はなかった。握力に関しては参加期間中,体調不良により数か月単位で欠席した2名において欠席後に低下したが,その他の参加者は維持もしくは上昇した。Time up and go testおよび努力性歩行時間では,93歳の軽度脳梗塞の参加者が開始当初から大きく時間短縮(23.4秒から10.1秒)し,その後3年間はその時間を維持した。再梗塞のため長期離脱した1名は,復帰後歩行時間は延長した。膝伸展筋力においては,68歳の整形外科疾患を既往する男性が2年経過後に上昇し,その後維持した(左;32kgから51.5kg,右40.5kgから50kg)。
【考察】生活期における地域在住の高齢者において,参加者を募り,健康増進事業において縦断的な身体機能の変化を調査した。今回の調査対象者は3年以上継続参加したものとして,経過を追ったが,再梗塞を発症し,約1年間欠席した1名を除き,身体機能レベルを維持・向上していた。本事業において毎週指導していただいたのは,事業スタッフ1名と運動指導士1名で,理学療法士は2週に1度の関わりであった。毎週のトレーニングにおいては,事前に個別評価した負荷量において実施,さらに前述の指導体制で遂行できたと考える。理学療法士として,本事業における介入の目的は,1)身体機能において詳細に評価し,参加者およびスタッフとの連携を図ること,2)理学療法介入時の運動プログラムを参加者が活発に参加できるものとすること,3)参加することを出来る限り継続できるためのモチベーションおよび環境を整えることに重点を置いた。そのため非常に高い参加継続率であり,それが生活基盤を広げ,社会参加への一助となっているのではないかと推察する。
【理学療法学研究としての意義】治療的な理学療法から生活を改善・サポートする理学療法への移行として,生活期高齢者に対する理学療法は様々な方法や場面で実施されている。今回の介入は理学療法士の少ない過疎地域における理学療法や生活リハビリテーションを考える上での理学療法の介入法として一助になるものと考える。