[P3-B-1074] 要介護高齢者における一年間の転倒予測因子
キーワード:要介護高齢者, 転倒, 歩行速度
【はじめに,目的】地域在住高齢者の転倒には,バランス能力や認知機能,視力,住環境,内服薬など多くの要因が影響することが知られている。高齢者の転倒は,バランス能力や住環境などの多方面からの介入により転倒リスクが軽減できることが報告されている。また,個別に転倒リスクを評価することで転倒リスクを軽減できるとされている(Gillespie 2012)。そこで本研究は,要介護高齢者を対象に1年間の追跡調査を実施し,身体機能から1年間の転倒リスクを把握できる因子を検討することとした。
【方法】通所リハビリテーションを利用する高齢者102名のうち,ベースライン評価ならびに1年後の再評価を実施できた35名(79.6±7.8歳,男性10名,女性25名)を分析対象者とした。対象の取り込み基準は研究参加への同意が得られ,自力で歩行が可能なこととし,痛みのために各測定項目を計測できなかった者は分析対象から除外した。ベースライン評価ならびに1年後の再評価の測定項目は,握力,大腿四頭筋筋力,開眼片足立ち,FRT,5m歩行時間,TUGとした。また,ベースライン評価から再評価時までの1年間の転倒経験を聴き取りにより調査し,転倒あり群(F)と転倒なし群(NF)に分類した。統計処理は,転倒経験の有無別に各測定項目をt検定により比較した。次に,1年間の転倒経験に影響を及ぼす因子を抽出するために,多重ロジステック回帰分析を行った。従属変数は転倒経験とし,独立変数はt検定にて有意差を認めた項目とした。次に,転倒の有無を判別するためにROC曲線からカットオフ値を求めた。さらに,カットオフ値から求められる予測値と実測値から感度,特異度,正診率などを算出した。統計解析にはSPSS 21(IBM)を用いた。
【結果】ベースライン評価から再評価までの1年間に転倒したのは35名のうち11名(転倒発生率31%)であった。ベースライン評価時の各測定項目を転倒の有無別に比較をした結果,開眼片足立ち(NF:6.8±7.0秒,F:3.2±1.8秒),TUG(NF:14.5±0.9秒,F:19.1±7.1秒),5m歩行時間(NF:6.2±1.9秒,F:8.5±3.2秒)に有意差(p<0.05)が認められた。これらの結果から,従属変数を転倒の有無とし,独立変数は開眼片足立ち,TUG,5m歩行時間を用いて多重ロジステック回帰分析を行った。その結果,選択された項目は5m歩行時間(オッズ比,1.51:1.05~2.17)であった。モデルのχ2検定は有意(p<0.01)であり,Hosmer-Lemeshow検定はp=0.770と適合していることが示された。予測値と実測値による転倒の判別的中率は76.5%であった。選択された5m歩行時間に加えて,交絡因子と思われる性別および年齢を強制投入したロジステック回帰分析を行ったものの,5m歩行時間の有意性は堅持された。次に,5m歩行時間から求めたROC曲線のAUCは0.72(0.53-0.92)であった。転倒を判別する5m歩行時間のカットオフ値は6.2秒であり,カットオフ値の感度は72.7%,特異度65.2%,正診率67.6%であった。
【考察】要介護高齢者の転倒に影響を及ぼす因子を検討した結果,選択されたのは5m歩行時間であった。また,歩行時間が1秒遅くなると転倒リスクが1.51倍も高くなることが示された。さらに,5m歩行時間が6.2秒よりも遅い者は,1年間の転倒のリスクが高くなることが明らかとなった。歩行速度は,高齢者の死亡率や入院リスクのほかに運動能力の低下を予測できる有効な評価法であるとされている(Rydwik 2012)。また,60代以上の歩行障害は,複数回の転倒と関連することが確認されている(Mahlknecht 2013)。今回,要介護高齢者の転倒を予測する因子として歩行速度が選択されたのは妥当であろうと思われる。本研究の結果から,要介護高齢者の歩行速度はその先1年間の転倒リスクと関連がある可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】5m歩行時間から通所リハビリテーション利用者の1年間の転倒リスクを把握できる可能性が示された。また,5m歩行の所要時間が6.2秒を超える要介護高齢者は,とくに転倒への配慮が必要である。これらの結果は,通所リハビリテーション利用者の支援プログラム立案の基礎資料として有用であると思われる。
【方法】通所リハビリテーションを利用する高齢者102名のうち,ベースライン評価ならびに1年後の再評価を実施できた35名(79.6±7.8歳,男性10名,女性25名)を分析対象者とした。対象の取り込み基準は研究参加への同意が得られ,自力で歩行が可能なこととし,痛みのために各測定項目を計測できなかった者は分析対象から除外した。ベースライン評価ならびに1年後の再評価の測定項目は,握力,大腿四頭筋筋力,開眼片足立ち,FRT,5m歩行時間,TUGとした。また,ベースライン評価から再評価時までの1年間の転倒経験を聴き取りにより調査し,転倒あり群(F)と転倒なし群(NF)に分類した。統計処理は,転倒経験の有無別に各測定項目をt検定により比較した。次に,1年間の転倒経験に影響を及ぼす因子を抽出するために,多重ロジステック回帰分析を行った。従属変数は転倒経験とし,独立変数はt検定にて有意差を認めた項目とした。次に,転倒の有無を判別するためにROC曲線からカットオフ値を求めた。さらに,カットオフ値から求められる予測値と実測値から感度,特異度,正診率などを算出した。統計解析にはSPSS 21(IBM)を用いた。
【結果】ベースライン評価から再評価までの1年間に転倒したのは35名のうち11名(転倒発生率31%)であった。ベースライン評価時の各測定項目を転倒の有無別に比較をした結果,開眼片足立ち(NF:6.8±7.0秒,F:3.2±1.8秒),TUG(NF:14.5±0.9秒,F:19.1±7.1秒),5m歩行時間(NF:6.2±1.9秒,F:8.5±3.2秒)に有意差(p<0.05)が認められた。これらの結果から,従属変数を転倒の有無とし,独立変数は開眼片足立ち,TUG,5m歩行時間を用いて多重ロジステック回帰分析を行った。その結果,選択された項目は5m歩行時間(オッズ比,1.51:1.05~2.17)であった。モデルのχ2検定は有意(p<0.01)であり,Hosmer-Lemeshow検定はp=0.770と適合していることが示された。予測値と実測値による転倒の判別的中率は76.5%であった。選択された5m歩行時間に加えて,交絡因子と思われる性別および年齢を強制投入したロジステック回帰分析を行ったものの,5m歩行時間の有意性は堅持された。次に,5m歩行時間から求めたROC曲線のAUCは0.72(0.53-0.92)であった。転倒を判別する5m歩行時間のカットオフ値は6.2秒であり,カットオフ値の感度は72.7%,特異度65.2%,正診率67.6%であった。
【考察】要介護高齢者の転倒に影響を及ぼす因子を検討した結果,選択されたのは5m歩行時間であった。また,歩行時間が1秒遅くなると転倒リスクが1.51倍も高くなることが示された。さらに,5m歩行時間が6.2秒よりも遅い者は,1年間の転倒のリスクが高くなることが明らかとなった。歩行速度は,高齢者の死亡率や入院リスクのほかに運動能力の低下を予測できる有効な評価法であるとされている(Rydwik 2012)。また,60代以上の歩行障害は,複数回の転倒と関連することが確認されている(Mahlknecht 2013)。今回,要介護高齢者の転倒を予測する因子として歩行速度が選択されたのは妥当であろうと思われる。本研究の結果から,要介護高齢者の歩行速度はその先1年間の転倒リスクと関連がある可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】5m歩行時間から通所リハビリテーション利用者の1年間の転倒リスクを把握できる可能性が示された。また,5m歩行の所要時間が6.2秒を超える要介護高齢者は,とくに転倒への配慮が必要である。これらの結果は,通所リハビリテーション利用者の支援プログラム立案の基礎資料として有用であると思われる。