第50回日本理学療法学術大会

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ポスター3

予防理学療法6

2015年6月7日(日) 10:50 〜 11:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1089] 介護予防二次予防事業対象者における健康関連QOLと家族形態との関連

岡部由季1, 加藤仁志1, 久保田直人1, 酒井みずき1, 鳥海亮1, 入山渉2 (1.群馬パース大学, 2.群馬パース大学大学院)

キーワード:二次予防事業対象者, 健康関連QOL, 家族形態

【はじめに,目的】
我が国の高齢化率は25.9%(平成26年9月15日推計)であり,今後も急速な高齢化が進み,平成72年には39.9%となるとされている。このような状況のなか,高齢者が生き生きとした生活を送るためには,健康関連QOLの維持・向上が重要であると考えられる。健康関連QOLとは,「個人や集団の主観的な心身の健康」と定義されている(伊藤ら,2010)。高齢心不全患者を対象とした健康関連QOLと家族形態の関連を調査した先行研究(宮下ら,2004)では,三人以上の家族と暮らしている患者が自宅へ退院すると,退院前に行っていた仕事や家庭内の役割を同居している家族が代行してしまうことなどによって患者の健康関連QOLが低下することが明らかになっている。このことから家族形態が高齢者の健康関連QOLと関わる重要な因子の一つであることがわかる。近年,介護予防の重要性が提唱されており,介護予防事業の対象者の健康関連QOLに家族形態が関わるかどうかを明らかにする必要があると考えられる。しかし,先行研究は高齢心不全患者を対象としており,介護予防二次予防事業対象者を対象にした研究は見当たらない。そこで本研究では介護予防二次予防事業対象者の健康QOLと家族形態との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象はA県山間部のB町とC村の介護予防事業に参加している二次予防事業対象者38名(男性9名,女性29名,平均年齢73.6歳,66~96歳)であった。対象者に健康関連QOLと家族形態についてのアンケートを行った。健康関連QOLの調査には,Euro QOL日本語版5項目法(以下,EQ-5D)を用いた。EQ-5Dは,「移動の程度」,「身の回りの管理」,「普段の活動」,「痛み/不快感」,「不安感/ふさぎ込み」という5つの質問項目からなる調査であり,「問題なし」,「いくらか問題あり」,「問題あり」の3件法で評価する方法を用いている。さらに,日本語版EQ-5Dの効用値換算表を用いて,5つの項目の結果から効用値と呼ばれる0(死を意味する)から1(完全な健康を意味する)までの値を求めることができる。家族形態については「独居」,「夫婦のみ」,「二世帯以上」の3つの分類を調査し,「独居」,「夫婦のみ」では他の家族に会う頻度を調査した。統計学的解析は,対象者を「独居」,「夫婦のみ」,「二世帯以上」の三群に分け,多重比較(Tukey法)を用いてEQ-5Dの効用値を三群間比較した。また,家族構成が「独居」,「夫婦のみ」の者の他の家族に会う頻度と健康関連QOLの関連性を,Spearmanの相関係数を算出し検討した。
【結果】
健康関連QOLの指標であるEQ-5Dの効用値は,「独居」で0.768±0.148,「夫婦のみ」で0.793±0.110,「二世帯以上」で0.827±0.151であった。三群間比較を多重比較(Tukey法)で行った結果,有意差は認められなかった。また,家族構成が「独居」,「夫婦のみ」の者の他の家族に会う頻度と健康関連QOLの関連性をSpearmanの相関係数を用いて検討した結果,健康関連QOLと家族に会う頻度との間に有意な関連は認められなかった。
【考察】
本研究の対象者である介護予防二次予防事業対象者において,家族形態の違いによって健康関連QOLは変わらないことが明らかになった。先行研究では,高齢心不全患者において,家族が退院後の役割を代行することにより健康関連QOLが低下することが明らかになっている。本研究の結果の要因は,二次予防事業対象者は自立した生活を送っており,家族が役割を代行することが少ないためではないかと考えられた。また,「独居」,「夫婦のみ」の家族形態の者の他の家族に会う頻度と健康関連QOLにも関連がないことが明らかになった。このことは,家族に会った際も家族に頼ることなく自立した生活を送っているため,健康関連QOLと他の家族に会う頻度に関連は認められないと考えられた。したがって,介護予防二次予防事業対象者の介護予防事業の内容を検討する際には,家族形態は考慮に入れなくても構わない可能性が考えられた。今後は,介護予防二次予防事業対象者の健康関連QOLと関連する項目を明らかにすることが課題であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,介護予防二次予防事業対象者の家族形態と健康関連QOLと家族形態は関連しないことが明らかとなった。この結果は介護予防二次予防事業の内容検討などの資料として有意義であると考えられた。