[P3-B-1095] 高齢者の足に関するQOLの調査
理学療法士がフットケアに参入する意義を考える
キーワード:SAFE-Q, フットケア, 高齢者
【はじめに,目的】
足部の変形や疼痛は転倒リスクの増加やセルフケア能力の低下,QOLの障害をもたらすとされており,フットケアの必要性は高まっている。しかし高齢者のフットケアに関するエビデンスは乏しく,日本フットケア学会によると,本邦では十分な処置がなされず,切断にいたることもあり,正しい予防が普及していないとされている。一方,高齢者は運動器疾患,中枢神経疾患,内部系疾患など,様々な疾患・障害を合併しており,その効果を従来の臨床場面で用いられてきた疾患特異的評価指標で検証することが困難である。これが先述した高齢者のフットケアのエビデンスの乏しいことの一因と考えられる。日本整形外科学会・日本足の外科学会は,2013年に「足部足関節評価質問票(SAFE-Q)」を,疾患非特異的な足に関わるQOL調査として開発した。そこで我々は高齢者に対してSAFE-Qを調査することで,高齢者の足部に関するQOLの基礎データを作成すること,さらに理学療法士がフットケアに参入する意義を検討できると考えた。本研究の目的は,通所リハビリテーションに通所中の高齢者のSAFE-Qの特徴を明らかにし,フットケアとして理学療法介入の意義を検討することとした。
【方法】
対象は,通所リハビリテーション利用中の高齢者で,認知症の診断がない41名(男/女;12/29名,平均年齢80.4±7.0歳)とした。なお,機能訓練中に立位保持ができない者,質問の内容が理解できないもの,明らかな抑うつ状態にある者は対象から除外した。SAFE-Qの調査はSAFE-Q使用手引きに基づき実施した。SAFE-Qは「痛み・痛み関連(9項目)」,「身体機能・日常生活の状態(11項目)」,「社会生活機能(6項目)」,「靴関連(3項目)」,「全体的健康感(5項目)」の5つの下位尺度を各項目100点満点で点数化した。各項目のヒストグラム作成し,得点分布を検討し,その後,各項目間の関係性を検討した。統計学的手法にはSPSS ver.18を使用して,各項目間の関係性はSpearmanの順位相関係数を検定し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
「痛み・痛み関連」は平均値81.6±19.0点,最頻値100点であった。「身体機能・日常生活の状態」は平均点56.0±24.3点,最頻値50.0点であった。「社会生活機能」は平均点57.4±31.0点,最頻値は37.5点であった。「靴関連」は平均点78.1±23.7点,最頻値は100点であった。「全体的健康感」は平均点64.5±27.0点,最頻値は90.0点であった。相関関係を認めた項目は社会生活機能と靴関連であり,相関係数0.7(p<0.05)と中等度以上の相関関係を認めた。
【考察】
欧米においては,成人の17~42%が足部の疼痛を有しており,そのうちの約半数が能力障害をもち,気分や行動,転倒リスクやセルフケア能力ひいてはQOLに障害をもたらすとされている(Hawke F, 2009)。しかし本研究の対象とした通所リハビリテーション利用中の高齢者においては,「痛み・痛み関連」といった項目のQOL最頻値が100点となっており,全体的に高い値を示すものが多かった。さらに足部の疼痛に関わる項目とその他のQOLを構成する項目の相関関係は低くなっていた。これは欧米と本邦での履物文化の違いが影響していると考えた。また,「身体機能・日常生活の状態」の項目は低値を示すものも多く,最頻値50点で,平均値も56点であった。以上のことから,通所リハビリテーションを利用する高齢者に対するフットケアや足部に対する理学療法の介入効果は,疼痛に関わる評価以外の項目,特に身体機能や日常生活の状態,社会生活機能に注目して検討する必要性が高いと考えられた。また,「社会生活機能」と「靴関連」に有意な相関関係を認めた。「社会生活機能」に関わる項目は自宅からの外出に関連する質問項目が多いため,「靴関連」の満足度が関係していると考えられる。そのため,安易な履きやすい靴の選択ではなく,利用者に対する靴選びのアドバイスや足趾変形への介入の必要性が示唆された。これらは理学療法士の職能を活かすことができる領域であり,理学療法士がフットケアへ介入する意義があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
SAFE-Q調査を行い,通所リハビリテーション利用中の高齢者は疼痛の有無だけでなく,社会生活機能や日常生活能力などの面からもQOLを低下させていることが明らかになった。そのため,疼痛だけでなく機能向上を図る運動療法や靴選び,足趾変形予防の運動療法はフットケアの一環として重要であり,理学療法士の職能が発揮できる領域であると考えた。
足部の変形や疼痛は転倒リスクの増加やセルフケア能力の低下,QOLの障害をもたらすとされており,フットケアの必要性は高まっている。しかし高齢者のフットケアに関するエビデンスは乏しく,日本フットケア学会によると,本邦では十分な処置がなされず,切断にいたることもあり,正しい予防が普及していないとされている。一方,高齢者は運動器疾患,中枢神経疾患,内部系疾患など,様々な疾患・障害を合併しており,その効果を従来の臨床場面で用いられてきた疾患特異的評価指標で検証することが困難である。これが先述した高齢者のフットケアのエビデンスの乏しいことの一因と考えられる。日本整形外科学会・日本足の外科学会は,2013年に「足部足関節評価質問票(SAFE-Q)」を,疾患非特異的な足に関わるQOL調査として開発した。そこで我々は高齢者に対してSAFE-Qを調査することで,高齢者の足部に関するQOLの基礎データを作成すること,さらに理学療法士がフットケアに参入する意義を検討できると考えた。本研究の目的は,通所リハビリテーションに通所中の高齢者のSAFE-Qの特徴を明らかにし,フットケアとして理学療法介入の意義を検討することとした。
【方法】
対象は,通所リハビリテーション利用中の高齢者で,認知症の診断がない41名(男/女;12/29名,平均年齢80.4±7.0歳)とした。なお,機能訓練中に立位保持ができない者,質問の内容が理解できないもの,明らかな抑うつ状態にある者は対象から除外した。SAFE-Qの調査はSAFE-Q使用手引きに基づき実施した。SAFE-Qは「痛み・痛み関連(9項目)」,「身体機能・日常生活の状態(11項目)」,「社会生活機能(6項目)」,「靴関連(3項目)」,「全体的健康感(5項目)」の5つの下位尺度を各項目100点満点で点数化した。各項目のヒストグラム作成し,得点分布を検討し,その後,各項目間の関係性を検討した。統計学的手法にはSPSS ver.18を使用して,各項目間の関係性はSpearmanの順位相関係数を検定し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
「痛み・痛み関連」は平均値81.6±19.0点,最頻値100点であった。「身体機能・日常生活の状態」は平均点56.0±24.3点,最頻値50.0点であった。「社会生活機能」は平均点57.4±31.0点,最頻値は37.5点であった。「靴関連」は平均点78.1±23.7点,最頻値は100点であった。「全体的健康感」は平均点64.5±27.0点,最頻値は90.0点であった。相関関係を認めた項目は社会生活機能と靴関連であり,相関係数0.7(p<0.05)と中等度以上の相関関係を認めた。
【考察】
欧米においては,成人の17~42%が足部の疼痛を有しており,そのうちの約半数が能力障害をもち,気分や行動,転倒リスクやセルフケア能力ひいてはQOLに障害をもたらすとされている(Hawke F, 2009)。しかし本研究の対象とした通所リハビリテーション利用中の高齢者においては,「痛み・痛み関連」といった項目のQOL最頻値が100点となっており,全体的に高い値を示すものが多かった。さらに足部の疼痛に関わる項目とその他のQOLを構成する項目の相関関係は低くなっていた。これは欧米と本邦での履物文化の違いが影響していると考えた。また,「身体機能・日常生活の状態」の項目は低値を示すものも多く,最頻値50点で,平均値も56点であった。以上のことから,通所リハビリテーションを利用する高齢者に対するフットケアや足部に対する理学療法の介入効果は,疼痛に関わる評価以外の項目,特に身体機能や日常生活の状態,社会生活機能に注目して検討する必要性が高いと考えられた。また,「社会生活機能」と「靴関連」に有意な相関関係を認めた。「社会生活機能」に関わる項目は自宅からの外出に関連する質問項目が多いため,「靴関連」の満足度が関係していると考えられる。そのため,安易な履きやすい靴の選択ではなく,利用者に対する靴選びのアドバイスや足趾変形への介入の必要性が示唆された。これらは理学療法士の職能を活かすことができる領域であり,理学療法士がフットケアへ介入する意義があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
SAFE-Q調査を行い,通所リハビリテーション利用中の高齢者は疼痛の有無だけでなく,社会生活機能や日常生活能力などの面からもQOLを低下させていることが明らかになった。そのため,疼痛だけでなく機能向上を図る運動療法や靴選び,足趾変形予防の運動療法はフットケアの一環として重要であり,理学療法士の職能が発揮できる領域であると考えた。