第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

ポスター3

代謝 がん

2015年6月7日(日) 10:50 〜 11:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1108] 糖尿病教育入院期間中における一日の平均歩数と一日の平均中強度活動時間についての調査

十時浩二, 古門功大, 小若女純 (JCHO九州病院リハビリテーション室)

キーワード:糖尿病, 歩数, 運動強度

【はじめに,目的】
糖尿病学会は,糖尿病の運動療法において中等度の運動強度を推奨している。また,中之条研究においても糖尿病予防のためには一日の平均歩数8,000歩及び平均中強度活動時間20分以上が必要としている。今回,当院の糖尿病教育入院中に一日の平均歩数8,000歩及び一日の平均中強度活動時間20分以上を満たす患者を調べ,その特徴について調査した。
【方法】
当院において2012年4月から2014年10月に糖尿病教育を行い,運動療法が可能であった患者126名(男性75名,女性51名,平均年齢61±12歳,)を対象とした。糖尿病教育入院の運動療法は10日間の入院期間中に最大6日,午前8時30分から約1時間程度,ストレッチ体操と有酸素運動,レジスタンストレーニングを実施している。また,入院時にスズケン社製の生活習慣記録機ライフコーダを装着し,非監視下での運動や運動実施時間及び運動強度の把握に利用している。退院時にはライフコーダのデータをもとにフィードバックを行い,退院後の運動療法継続や運動療法の注意点などのアドバイスを行っている。このライフコーダのデータをもとに教育入院中に一日の平均歩数8,000歩及び平均中強度活動時間20分以上であったものをA群,それ以外をB群とした。なお,運動強度はライフコーダにおける中等度4以上の運動強度を採用した。この2群において糖尿病関連指標である罹病期間,HbA1c,入退院時のBMI,入退院時の体脂肪率,入退院時の筋肉量,合併症の有無,インスリン使用の有無について比較した。また,運動療法関連の指標として運動習慣の有無,入退院時の行動変容ステージ,入退院時における有酸素運動とレジスタンストレーニングのセルフエフィカシー,一日平均歩数,運動における一日平均消費カロリー,一日の平均中強度活動時間についても比較した。
【結果】
A群は40名(31.7%),B群は86名(68.3%)であり,2群間に性別や年齢に有意差はなかった。糖尿病関連の指標である罹病期間,HbA1c,入退院時のBMI,入退院時の体脂肪率,入退院時の筋肉量,合併症の有無,インスリン使用の有無に関して有意差を認めなかった。また,運動療法の指標においては,運動習慣(p=0.001),入退院時の行動変容ステージ(入院時p=0.008,退院時p=0.004),退院時の有酸素運動のセルフエフィカシー(p=0.028),一日平均歩数(p<0.001),運動における一日平均消費カロリー(p<0.001),一日の平均中等度活動時間(p<0.001)においてA群が有意に高かった。
【考察】
A群では罹病期間が短く,HbA1cが低く,合併症やインスリン使用が少ないと予想したが,有意差は認められなかった。これは,糖尿病のコントロール不良や罹病期間が長いために積極的に運動療法を行っている患者がいることを示唆しており,それらのモチベーション維持のための工夫が必要だと思われる。また,糖尿病関連の指標で入退院時に有意差が認められなかったのは10日間という期間が短かったことが考えられる。一日の平均歩数8,000歩及び一日の平均中強度活動時間20分以上を満たす患者は,運動習慣を有するものがA群に有意に多かったのは妥当な結果であると思われるが,運動習慣のほとんどがウォーキングであることがセルフエフィカシーや筋肉量の結果から推測される。レジスタンストレーニングのさらなる強化の必要性を感じた。一日の平均歩数,運動における消費カロリー,中等度活動時間においてはA群が有意に多く,入退院時の行動変容ステージや退院時の有酸素運動のセルフエフィカシーもA群が有意に高い。これは,行動面と心理面が一致した理想的な結果であると考える。B群が一日の平均歩数8,000歩及び平均中強度活動時間20分以上に到達できるよう支援することは重要であるが,B群の中でも平均歩数のみが不足している患者群(25.4%)と平均中等度活動時間のみが不足している患者群(4%),どちらも不足している患者群(38.9%)それぞれに応じた対応が今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
今回,糖尿病関連の指標に有意差がみられなかったが,中之条研究は長期間のデータを取り続けているため,当院でも継続した評価の仕組みを作る必要がある。また,中之条研究では糖尿病予防のための基準であったが,糖尿病患者においては同様の基準でよいのかは今後の課題であり,調査の継続が必要であると考える。