第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

がん その他1

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1116] がん患者に対するリハビリ初回時の栄養状態が身体活動・QOLに与える影響について

松森圭司, 山鹿隆義, 中曽根沙妃, 大津勇介, 上野七穂, 岡本梨江, 吉村康夫 (信州大学医学部附属病院リハビリテーション部)

Keywords:栄養状態, 活動量, QOL

【はじめに,目的】
がん患者は様々な原因で体重減少,低栄養状態となることが知られており,がん患者の40~80%に栄養障害があると言われている。理学療法士は栄養状態を考慮し運動負荷の設定を行うことが必要であるが,がん患者の栄養とADL・活動量・QOLとの関係を調査したものはわれわれが渉猟しえた範囲内では無かった。そこで,本研究は,がん患者の栄養状態と活動量・QOLとの関係を調査し,リハビリ初回介入時の栄養状態が活動量・QOLに影響する有用な情報となるかを検討した。
【方法】
当院入院患者のうち,悪性腫瘍と診断され,リハ依頼のあったがん患者12名(男性8名,女性4名,平均年齢66.8±11.6歳)とした。なお,明らかな意識障害や認知症・精神疾患の既往もしくは合併があるものは対象から除外した。原発巣の内訳は頭頸部5名,呼吸器2名,肝胆道1名,消化器1名,造血器1名,内分泌1名,乳腺1名であった。平均介入日数は11.63±6.07日,平均在院日数は22.81±10.22日であった。栄養情報として血清アルブミン値(以下,Alb値),BMI,一週間の平均経口摂取カロリー(以下,平均カロリー)をカルテから調査した。活動量は生活習慣記録器(以下,ライフコーダGS)で測定し,介入開始後1週間の平均歩数,活動総時間をデータとして用いた。身体機能評価はPerformance Status Scale(以下,PS)を用い,日常生活能力はFunctional Independence Measureの運動項目(以下,m-FIM)にて測定した。QOLの評価はEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(以下,EORTC QOL-C30)を用いた。統計学的解析はSpearmanの順位相関分析で行い,危険率5%を有意差ありとした。
【結果】
各測定項目の平均値は,Alb値は3.03±0.74 g/dL,歩数は991±1076歩,活動総時間は10.48±11.61分,摂取カロリー平均は951.38±576.24kcal,m-FIMは55±37点であった。項目ごとの相関は,Alb値と歩数(r=.809),活動総時間(r=.809)に正の相関,EORTC QOL-C30の倦怠感(r=-.676)に負の相関が認められた。しかし,その他のEORTC QOL-C30の項目,平均カロリー,BMI,PS,m-FIMとの間には有意な相関は認められなかった。
【考察】
Alb値は血清タンパク質の60%を占め,栄養状態を判断するのによい指標とされている。通常,血清Alb値が3.5 g/dl以下を低栄養状態とみなすことにより,本研究の対象者はほとんど低栄養状態であったと考えられる。若林ら(2014)は,がんは進行すると体脂肪減少,骨格筋タンパクの崩壊を伴うタンパク代謝の亢進を惹起し,倦怠感の増悪をもたらすと報告している。本研究でもAlb値と倦怠感に関連を認めたことから,骨格筋など体組成に変化があった可能性が示唆された。また,Alb値が歩数と活動総時間に相関を認めたことから,介入初回のAlb値は活動量・運動負荷量を決定する指標になると推察された。本研究の限界として対象者数が少なく,また介入時の栄養状態や原発巣の偏りが大きいなど対象群の性質に偏りがあり,がん患者全体に結果を反映させることができないことがあげられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究によりリハビリ初回時のAlb値が活動量に影響を与える可能性があり,理学療法介入時の運動負荷量決定にAlb値が重要な因子であることが示唆された。これらを明らかにすることにより,かん患者へのリハビリテーションの発展に寄与できると考える。