第50回日本理学療法学術大会

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Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1146] 当院における脳卒中地域連携クリニカルパスの状況

~5年間の経過報告~

桑嶋博史, 塩田和輝, 菰渕真紀, 多田善則, 小野恭裕, 本田透 (香川県立中央病院リハビリテーション科)

Keywords:脳卒中, 地域連携パス, シームレス

【はじめに】
2006年4月に大腿骨近位部骨折を対象とした地域連携診療計画管理料が新設され,翌年6月に当院が所属する地域で高松・東讃地区シームレスケア研究会が発足した。2008年4月に脳卒中が対象に追加され,2008年8月より当院を計画管理病院とする脳卒中地域連携クリニカルパス(以下,地域連携パス)が導入された。今回,当院を計画管理病院とする地域連携パス使用状況経過の報告を行う。
【対象】
2008年8月から2013年7月までの5年間に当院に入院した脳神経外科患者のうち,地域連携パスを使用し,連携保険医療機関(以下,連携機関)へ転院した患者および当院から自宅へ退院し連携機関へ通院した患者を対象とした。
【方法】
地域連携パスの使用状況を,後方視的に当院電子カルテと連携機関からの経過報告書兼依頼書(以下,経過報告書)に記載された情報から,地域連携パス適応患者の内訳,在院日数,転院調整日数,経過報告書の返信状況,自宅復帰率について調査した。
また,2008年8月から2013年7月までを1年間毎の5期に分け,各期における平均在院日数,脳卒中地域連携診療計画管理料の算定率(以下,算定率),入院からリハビリテーション(以下,リハ)開始までの日数,入院から離床(車椅子座位または立位)までの日数を調査した。
統計学的検定にはKruskal-Wallis検定を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
患者内訳として,地域連携パス適応例は377例であり(脳梗塞225例,脳出血126例,くも膜下出血26例),そのうち自宅退院は15例であった。
平均在院日数は当院38.1±25.1日,連携機関95.9±54.1日,総在院日数135.0±64.9日であり,1~5期では有意差はなかった。転院調整期間として,入院から主治医による地域連携室への転院調整依頼までに20.4±15.3日,その後転院までに18.7±16.5日を要した。
経過報告書の返信数は269例あり,返信率は70.8%であった。返信率は回復期病棟のある病院(以下,回復期病院)84.9%と,回復期病院以外の病院(以下,一般病院)42.4%であった。
脳卒中地域連携診療計画管理料の算定率は71.1%であり,4期以降に有意に向上した(p<0.05)。
リハ開始までの日数は2.0±1.7日であり,3期以降に有意に減少した(p<0.05)。離床までの日数は10.2±10.4日であり,1~5期で有意差はなかった。
連携機関から転帰として,自宅退院は175例(自宅復帰率:65.5%),施設への転所56例,転院28例,死亡1例であった。
【考察】
全国回復期リハビリ病棟連絡協議会や他地域の報告と比較すると,当院および連携機関の平均在院日数はやや長かった。連携機関の受け入れ状況により退院までに時間を要するため,他の報告のようには地域連携パス導入後に在院日数が減少しなかったと考える。
当院では地域連携パスが導入された後より様々な問題点が挙がった。特に算定率の低迷に対しては,月に1度開催していた地域連携パス院内連絡会で協議され,同意書等の改良や主治医への地域連携パス説明実施の呼びかけを強化したことで2011年7月より算定率が向上し,現在も維持できている。
リハ開始までの日数は地域連携パス導入後に短縮しはじめた。地域連携パス導入により,早期のリハ開始が意識され始めたこともその要因の1つと考える。なお,当院では2013年4月から土曜日のリハが開始となり,今後はさらにリハ開始までの日数が減少することが期待される。
経過報告書の返信率は,回復期病院と一般病院で差が見られており,他地域の報告とほぼ同程度の結果であった。また,自宅復帰率に関しても他の報告とほぼ同程度の結果であった。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中では発症早期からのリハ開始や回復期病院へのスムースな転院が求められ,地域連携パスを用いることで継ぎ目のない治療の継続が期待される。本研究結果から,当院における脳卒中患者に対しての治療経過および転帰が明らかとなり,当院での今後の理学療法の展開を考えていく一助となると考える。