第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター17

運動器/脊椎

Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-0853] 自動肩関節屈曲可動域拡大を目指した頚椎症性筋萎縮症の一症例

~体幹筋に着目して~

西亮介, 吉田亮太, 野中一誠, 野中理絵, 松島知生, 西恒亮 (医療法人龍邦会東前橋整形外科)

Keywords:頚椎症性筋萎縮症, 体幹, 筋出力

【目的】
今回頚椎症性筋萎縮症により,自動肩関節屈曲可動域(以下,AROM)の減少を生じ,洗濯動作に支障をきたした症例を担当した。先行研究に準じ肩甲帯筋力トレーニングを行ったがAROMに改善がみられず,再評価の結果を基に体幹筋と肩甲帯周囲筋を同時出力させるトレーニングを行った所,AROMの拡大に成功した。頚椎症性筋萎縮症に対する理学療法を行う上で臨床上意義を有すると考えたので報告する。
【症例提示】
対象は70歳女性。診断名は頚椎症性筋萎縮症。主訴は左肩が挙がらず洗濯物が干せない。評価結果として,他動肩関節屈曲可動域は問題なく,AROMは座位で110度であった。神経学的評価はC5-6前角の障害が疑われ,肩甲帯筋力トレーニングを3ヶ月間行ったが,AROMに変化は無かった。そこで肩関節筋出力増加の条件を評価した。肩関節屈曲に対し抵抗を加えると肩甲骨下方回旋を確認し,徒手的に肩甲骨を固定することで肩関節筋出力増加を認めた。また胸郭の徒手的な固定や腹部収縮による能動的な体幹の固定においても抵抗時の肩甲骨下方回旋は生じず,肩関節筋出力増加した。
【経過と考察】
肩関節筋出力増加の条件を評価した結果,腹部の収縮を肩関節周囲筋と同時に行う事で胸郭・肩甲骨の安定性が増し,肩関節筋出力増加を認めた。そのため,体幹筋と肩甲帯周囲筋を同時出力させるトレーニングを更に3ヶ月間行った所,AROMが110度から140度と改善し洗濯動作が可能となった。体幹への介入として腹部の収縮を行うことによって胸郭の安定性が増し,肩甲帯周囲筋の筋出力が増加し,更に肩関節周囲筋の筋出力増加に繋がったのではないかと考えられる。また,三浦は肩関節屈曲運動に胸郭の安定性が必要としており胸郭の安定化に体幹筋の関与を報告している。このことから,頚椎症性筋萎縮症患者に対して肩甲帯筋力トレーニングだけではなく体幹筋の同時出力が効果的であると示唆された。