[P3-C-0891] Hand-held Dynamometerを用いた膝伸展筋力測定の再現性と妥当性についての文献検証
Keywords:ハンドヘルドダイナモメータ, 等尺性膝伸展筋力, 筋力測定
【はじめに,目的】筋力は理学療法において高い頻度で行われる評価項目の一つである。代表的な筋力評価方法には徒手筋力検査法があるが,グレード3以上では客観性が低下することが指摘されている。このことから,客観性に配慮した方法としてHand-held Dynamometer(以下HHD)が臨床および研究の場で広く用いられている。測定される筋群のなかでも膝伸展筋力は立ち上がりや歩行といった動作能力と密接な関連があり,下肢の代表的な筋力として評価されることが多い。一方,HHDは軽量で携帯性に優れているが,その測定値は被験者や検者の体格や体力水準の影響を受けるため,HHDを用いる筋力測定は,その測定方法の再現性と妥当性を把握する必要がある。本研究の目的は,本邦におけるHHDを用いた膝伸展筋力測定の方法を文献検証し,臨床や研究で有用な測定方法と課題を明らかにすることである。
【方法】文献は,医中誌のデータベースを用い検索した。検索年は1986年以降とし,2014年10月28日に検索した。検索キーワードは「Hand-held Dynamometer」,「ハンドヘルドダイナモメーター」,「徒手筋力計」とし,「原著論文」と「会議録を除く」で絞り込み検索をした。抽出された文献のうち膝伸展筋力の測定方法に関する文献を検証対象とした。
【結果】424文献が抽出され,その中で膝伸展筋力の測定方法に関する26文献を検証対象とした。膝伸展筋力の測定対象者は13文献が健常成人,3文献が脳卒中患者,2文献が整形外科疾患患者,2文献が地域在住の虚弱高齢者,透析患者と脳性麻痺児が1文献ずつ,健常成人と運動器疾患を有さない高齢入院患者を比較したものが3文献,脳血管疾患患者と整形外科疾患患者を比較したものが1文献であった。測定機器はアニマ社製のμTasシリーズを使用しているものが17文献あり,JTECH社製のPowerTrackIIが3文献,他の機器が3文献,未記載が3文献あった。測定姿勢はすべて座位であったが,座位の条件は端座位が17文献,車椅子座位が1文献,端座位と車椅子座位の比較が1文献,端座位と車椅子座位と介護ベッド上端座位とパイプ椅子上座位の4つの座位条件の比較が1文献,椅子の使用の有無での比較が1文献あり,5文献には記載がなかった。測定肢位は,全ての文献で膝屈曲90度の角度に設定され,8文献が両上肢を体幹の前方で組むよう指示,3文献が手でベッド端を支持するよう指示,4文献がベッド上に置くよう指示,自由としたものが1文献,残りの8文献には記載がなかった。筋収縮形態は全ての文献で等尺性収縮様式での測定であり,収縮時間は5秒間としたものが13文献,3秒が5文献,10秒が1文献で,残りの7文献には記載がなかった。固定方法については,徒手固定とベルト固定を比較したものが5文献,ベルト固定法を用いたものが15文献,徒手による固定を用いたものが3文献であった。再現性が報告されているのは13文献,妥当性が報告されているものは7文献,どちらも検討したものが3文献,残りの3文献は再現性や妥当性については報告されていなかった。級内相関係数0.75以上の高い再現性と,相関係数が0.5以上である良好な妥当性の双方を報告した膝伸展筋力測定方法は1種類のみであった。その方法は,端座位で体幹を垂直に保ち,上肢を体幹の前方で組ませた姿勢であること,測定機器をベルトで固定し3秒間の筋収縮をさせていた。なお,このときの検者内再現性は0.99であり,検者間再現性と妥当性は健常成人,高齢者を対象としたいずれの検討においても0.9以上の高い値であった。
【考察】HHDを用いた膝伸展筋力の測定方法について26文献を検証した結果,高い再現性と妥当性を有する測定方法は1種類のみであった。端座位にて機器をベルトで固定する方法は,健常成人においても運動器疾患を有しない高齢入院患者でも再現性は高く,妥当性も良好であった。よってこの測定方法は臨床や研究で用いる有用な方法と考えられた。しかし,臨床においては端座位の保持や体幹を垂直保持,上肢を体幹前方で組むことができない症例も多く,このような対象者に適応可能な測定方法が必要と考えられる。また測定対象者には,運動器疾患を有する者も多く,運動器疾患者を対象とした良好な再現性と妥当性を有するHHDを用いた膝伸展筋力測定方法についての研究,開発が必要である。
【理学療法学研究としての意義】優れた検者内,検者間の再現性と妥当性を有するHHDを用いた膝伸展筋力測定方法を提示することは,患者の筋力の適切な評価につながるとともに,臨床活用に必要な測定時の考慮点,検証課題を明らかにした点で,臨床,研究,教育のすべての理学療法分野に活用できる情報を提供した有用な研究である。
【方法】文献は,医中誌のデータベースを用い検索した。検索年は1986年以降とし,2014年10月28日に検索した。検索キーワードは「Hand-held Dynamometer」,「ハンドヘルドダイナモメーター」,「徒手筋力計」とし,「原著論文」と「会議録を除く」で絞り込み検索をした。抽出された文献のうち膝伸展筋力の測定方法に関する文献を検証対象とした。
【結果】424文献が抽出され,その中で膝伸展筋力の測定方法に関する26文献を検証対象とした。膝伸展筋力の測定対象者は13文献が健常成人,3文献が脳卒中患者,2文献が整形外科疾患患者,2文献が地域在住の虚弱高齢者,透析患者と脳性麻痺児が1文献ずつ,健常成人と運動器疾患を有さない高齢入院患者を比較したものが3文献,脳血管疾患患者と整形外科疾患患者を比較したものが1文献であった。測定機器はアニマ社製のμTasシリーズを使用しているものが17文献あり,JTECH社製のPowerTrackIIが3文献,他の機器が3文献,未記載が3文献あった。測定姿勢はすべて座位であったが,座位の条件は端座位が17文献,車椅子座位が1文献,端座位と車椅子座位の比較が1文献,端座位と車椅子座位と介護ベッド上端座位とパイプ椅子上座位の4つの座位条件の比較が1文献,椅子の使用の有無での比較が1文献あり,5文献には記載がなかった。測定肢位は,全ての文献で膝屈曲90度の角度に設定され,8文献が両上肢を体幹の前方で組むよう指示,3文献が手でベッド端を支持するよう指示,4文献がベッド上に置くよう指示,自由としたものが1文献,残りの8文献には記載がなかった。筋収縮形態は全ての文献で等尺性収縮様式での測定であり,収縮時間は5秒間としたものが13文献,3秒が5文献,10秒が1文献で,残りの7文献には記載がなかった。固定方法については,徒手固定とベルト固定を比較したものが5文献,ベルト固定法を用いたものが15文献,徒手による固定を用いたものが3文献であった。再現性が報告されているのは13文献,妥当性が報告されているものは7文献,どちらも検討したものが3文献,残りの3文献は再現性や妥当性については報告されていなかった。級内相関係数0.75以上の高い再現性と,相関係数が0.5以上である良好な妥当性の双方を報告した膝伸展筋力測定方法は1種類のみであった。その方法は,端座位で体幹を垂直に保ち,上肢を体幹の前方で組ませた姿勢であること,測定機器をベルトで固定し3秒間の筋収縮をさせていた。なお,このときの検者内再現性は0.99であり,検者間再現性と妥当性は健常成人,高齢者を対象としたいずれの検討においても0.9以上の高い値であった。
【考察】HHDを用いた膝伸展筋力の測定方法について26文献を検証した結果,高い再現性と妥当性を有する測定方法は1種類のみであった。端座位にて機器をベルトで固定する方法は,健常成人においても運動器疾患を有しない高齢入院患者でも再現性は高く,妥当性も良好であった。よってこの測定方法は臨床や研究で用いる有用な方法と考えられた。しかし,臨床においては端座位の保持や体幹を垂直保持,上肢を体幹前方で組むことができない症例も多く,このような対象者に適応可能な測定方法が必要と考えられる。また測定対象者には,運動器疾患を有する者も多く,運動器疾患者を対象とした良好な再現性と妥当性を有するHHDを用いた膝伸展筋力測定方法についての研究,開発が必要である。
【理学療法学研究としての意義】優れた検者内,検者間の再現性と妥当性を有するHHDを用いた膝伸展筋力測定方法を提示することは,患者の筋力の適切な評価につながるとともに,臨床活用に必要な測定時の考慮点,検証課題を明らかにした点で,臨床,研究,教育のすべての理学療法分野に活用できる情報を提供した有用な研究である。