[P3-C-0925] 間歇的伸張運動によるラット廃用性筋萎縮の抑制効果
―継時的変化および筋長軸部位別の相違に着目して―
Keywords:廃用性筋萎縮, 伸張運動, 長軸部位
【はじめに,目的】
近年,廃用性萎縮筋に対する伸張運動の萎縮抑制効果に関する報告が多くなされている。しかし,筋の長軸部位別の萎縮抑制効果やその継時的変化に関して検討した研究は少なく,理学療法として介入方法を工夫できる可能性がある。
そこで本研究では,後肢懸垂により廃用性筋萎縮を呈したラットヒラメ筋に短時間の間歇的伸張刺激を加え,筋線維横断面積(Cross-Sectional Area:CSA)と壊死線維割合を指標として廃用性筋萎縮時の筋の継時的変化と伸張運動による筋長軸部位別の萎縮抑制効果を検討することを目的とした。
【方法】
8週齢Wistar系雄性ラットのヒラメ筋を対象とした(n=84匹)。無処置のまま飼育する群(Con群:n=30匹),後肢懸垂処置にて廃用性筋萎縮を作製する群(HS群:n=28匹)および後肢懸垂期間中に1日5分間の間歇的伸張運動を毎日実施する群(ST群:n=26匹)に振り分けた。さらに,Con群とHS群,ST群を実験期間3/7/10/14日時点に分けた(Con群のみ0日時点含む)。実験期間終了後,ヒラメ筋を摘出し,筋長の25%(近位部)・50%(中央部)・75%(遠位部)切断面の凍結横断切片を作成しHematoxylin-eosin染色を実施した。その後,顕微鏡画像をもとにCSAおよび筋壊死線維数を測定した。統計処理は二元配置分散分析を行い,下位検定としてBonferroniの方法による検定を行った。
【結果】
CSAの継時的変化に関しては,3日でHS・ST群にほぼ差がなかったのに対し,7・10日目では萎縮の程度はHS群に比べST群の方が大きかった。14日目では,Con群と比較しHS・ST群ともに有意に低値を示し,HS群と比較しST群は有意に高値を示した。
部位別CSAの平均値の変化率は,懸垂開始7日時点において近位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ36%,32%減少した。中央部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ24%,30%減少した。遠位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ14%,28%減少した。14日時点において,近位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ35%,31%減少した。中央部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ32%,18%減少した。遠位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ26%,14%減少した。
壊死線維割合は,ST群において伸張運動開始時より急激に増加し14日目に減少したのに対してHS群は継時的に増加していく傾向にあった。
【考察】
本研究において,2週間の懸垂期間中に短時間の間歇的伸張運動を行うことで,3・7・10日目では筋萎縮抑制効果は得られなかったが,14日目で萎縮抑制効果を認めることが示唆された。部位別検討においては,7日目におけるST群の中央部・遠位部CSAがHS群に比べ小さくなっているのに対して,14日目では,ST群の全ての部位で廃用性筋萎縮抑制効果を認め,近位部より遠位部で萎縮抑制効果が大きかった。ST群では壊死線維割合が介入当初より急増していることから,伸張運動による筋線維損傷が引き起こされ,7日目では筋線維損傷から筋線維が再生するまでに至らなかった可能性が示唆された。また,伸張運動による筋萎縮抑制効果は出現する時期,および部位による効果の差があることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
廃用性筋萎縮に対する伸張運動の萎縮抑制効果が介入期間や部位によって異なることが明らかになることで,萎縮抑制効果の出現時期や筋の部位を考慮した効率的な理学療法介入方法を考えることが可能となると考える。本研究結果はその基礎データとして有用である。
近年,廃用性萎縮筋に対する伸張運動の萎縮抑制効果に関する報告が多くなされている。しかし,筋の長軸部位別の萎縮抑制効果やその継時的変化に関して検討した研究は少なく,理学療法として介入方法を工夫できる可能性がある。
そこで本研究では,後肢懸垂により廃用性筋萎縮を呈したラットヒラメ筋に短時間の間歇的伸張刺激を加え,筋線維横断面積(Cross-Sectional Area:CSA)と壊死線維割合を指標として廃用性筋萎縮時の筋の継時的変化と伸張運動による筋長軸部位別の萎縮抑制効果を検討することを目的とした。
【方法】
8週齢Wistar系雄性ラットのヒラメ筋を対象とした(n=84匹)。無処置のまま飼育する群(Con群:n=30匹),後肢懸垂処置にて廃用性筋萎縮を作製する群(HS群:n=28匹)および後肢懸垂期間中に1日5分間の間歇的伸張運動を毎日実施する群(ST群:n=26匹)に振り分けた。さらに,Con群とHS群,ST群を実験期間3/7/10/14日時点に分けた(Con群のみ0日時点含む)。実験期間終了後,ヒラメ筋を摘出し,筋長の25%(近位部)・50%(中央部)・75%(遠位部)切断面の凍結横断切片を作成しHematoxylin-eosin染色を実施した。その後,顕微鏡画像をもとにCSAおよび筋壊死線維数を測定した。統計処理は二元配置分散分析を行い,下位検定としてBonferroniの方法による検定を行った。
【結果】
CSAの継時的変化に関しては,3日でHS・ST群にほぼ差がなかったのに対し,7・10日目では萎縮の程度はHS群に比べST群の方が大きかった。14日目では,Con群と比較しHS・ST群ともに有意に低値を示し,HS群と比較しST群は有意に高値を示した。
部位別CSAの平均値の変化率は,懸垂開始7日時点において近位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ36%,32%減少した。中央部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ24%,30%減少した。遠位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ14%,28%減少した。14日時点において,近位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ35%,31%減少した。中央部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ32%,18%減少した。遠位部ではCon群と比較しHS群,ST群はそれぞれ26%,14%減少した。
壊死線維割合は,ST群において伸張運動開始時より急激に増加し14日目に減少したのに対してHS群は継時的に増加していく傾向にあった。
【考察】
本研究において,2週間の懸垂期間中に短時間の間歇的伸張運動を行うことで,3・7・10日目では筋萎縮抑制効果は得られなかったが,14日目で萎縮抑制効果を認めることが示唆された。部位別検討においては,7日目におけるST群の中央部・遠位部CSAがHS群に比べ小さくなっているのに対して,14日目では,ST群の全ての部位で廃用性筋萎縮抑制効果を認め,近位部より遠位部で萎縮抑制効果が大きかった。ST群では壊死線維割合が介入当初より急増していることから,伸張運動による筋線維損傷が引き起こされ,7日目では筋線維損傷から筋線維が再生するまでに至らなかった可能性が示唆された。また,伸張運動による筋萎縮抑制効果は出現する時期,および部位による効果の差があることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
廃用性筋萎縮に対する伸張運動の萎縮抑制効果が介入期間や部位によって異なることが明らかになることで,萎縮抑制効果の出現時期や筋の部位を考慮した効率的な理学療法介入方法を考えることが可能となると考える。本研究結果はその基礎データとして有用である。