[P3-C-0931] 後肢非荷重期間中の荷重負荷とヌクレオプロテイン摂取の併用がミトコンドリア機能に及ぼす影響
Keywords:後肢非荷重, 栄養サポート, 骨格筋ミトコンドリア機能
【はじめに,目的】不活動状態ではミトコンドリア内の活性酸素種(ROS)が過剰産生し,ミトコンドリア機能障害を惹起する。また,過剰なROSは筋核のアポトーシスを誘導し,筋核数を減少させる。筋核はミトコンドリア遺伝子の発現を制御する小器官であるため,筋核数の減少はミトコンドリア機能に影響すると考えられている。このためにミトコンドリア機能の維持にはROSの過剰産生を抑制し,筋核数を維持する必要があると考えられる。一方,ヌクレオチド摂取には抗酸化作用があることが報告されており,ヌクレオチド摂取で不活動状態におけるROS産生を抑制し,筋核数及びミトコンドリア機能を維持できるのではないかと考えられる。また,運動負荷とアミノ酸摂取の併用はミトコンドリア新生を促進し,ミトコンドリア機能を改善させると報告されている。そこで,本研究ではラット後肢非荷重期間中の荷重運動負荷と豊富なアミノ酸とヌクレオチドを含むヌクレオプロテインの摂取による骨格筋内のミトコンドリア機能障害の予防効果について検証した。
【方法】9週齢の雄性SDラット30匹を対照群(CON),後肢非荷重群(HU),ヌクレオプロテインを摂取した後肢非荷重群(HU+NP),後肢非荷重期間中に荷重負荷を与えた群(HU+Lo),ヌクレオプロテインを摂取し,後肢非荷重期間中に荷重負荷を与えた群(HU+Lo+NP)に分類した。ヌクレオプロテインはゾンデで経口摂取(800 mg/kg/日)させた。また,荷重運動負荷は1時間/日とした。7日間の後肢非荷重の期間終了後,ヒラメ筋を摘出し,急速冷凍して保存した。ミトコンドリア機能の指標としてクエン酸合成酵素(CS)活性,ミトコンドリアでのROS産生の指標としてSOD-2発現量を測定した。また,薄切切片にHematoxylin-Eosin染色を施し,筋線維当たりの筋核数(筋核・筋線維比)を算出した。得られた測定値の統計処理には一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】HU群,HU+NP群及びHU+Lo群のCS活性は,CON群と比較して有意に低値を示した。一方,HU+Lo+NP群ではHU群,HU+NP群,HU+Lo群と比較して有意に高値を示した。HU群,HU+NP群及びHU+Lo群のSOD-2発現量は,CON群と比較して有意に高値を示したが,HU+Lo+NP群ではCON群と比較して有意な変化を示さなかった。HU群,HU+NP群の筋核・筋線維比は,CON群と比較して有意に低値を示したが,HU+Lo+NP群ではHU群と比較して有意に高値を示した。
【考察】不活動は骨格筋ミトコンドリアでの過剰ROSを産生させ,ミトコンドリア機能障害を惹起すると報告されている。本研究においても,後肢非荷重によるCS活性の低下は,SOD-2発現量が増加し,ミトコンドリアでの過剰ROS産生に起因していると考えられる。Xuらの報告(2012)では長期間のヌクレオチド摂取により抗酸化作用を示したが,本研究では後肢非荷重の期間中にヌクレオプロテインを摂取するだけでは,ROS産生量に変化はなく,CS活性を維持することができなかった。本研究では,先行研究と比較して摂取期間が短かったため,ヌクレオプロテイン摂取のみではROS産生量を抑制できなかったと考えられる。一方,後肢非荷重の期間中に荷重運動負荷とヌクレオプロテイン摂取を併用することにより過剰ROS産生及び筋核数の減少を抑制することができた。運動はミトコンドリア膜に存在するヌクレオチド輸送体の発現を活性化させる(Fernstrom, 2003)。このことから荷重運動負荷により抗酸化作用を有するヌクレオチドがミトコンドリア内に入りやすくなり,ROS過剰産生を効果的に抑制したと考えられる。さらに荷重運動負荷とヌクレオプロテイン摂取の併用でCS活性を維持することができた。ROS過剰産生及び筋核数の減少は共にミトコンドリア機能に関連すると報告(Powers, 2012)されていることから,ROS過剰産生及び筋核数の減少を予防することでミトコンドリア機能を維持することができたと考えられる。また,運動負荷とアミノ酸摂取の併用はミトコンドリア新生を促すことからヌクレオプロテインに含まれるアミノ酸もミトコンドリア新生を促し,ミトコンドリア機能維持に寄与したと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】ミトコンドリア機能は筋持久力やADL等に関与するため,臨床的にも非常に重要である。ヌクレオプロテインの摂取と運動療法の併用は不活動期間中の骨格筋におけるミトコンドリア機能低下を軽減する一助となることが示され,理学療法における栄養サポートの重要性を示唆した研究として,意義あるものと考えられる。
【方法】9週齢の雄性SDラット30匹を対照群(CON),後肢非荷重群(HU),ヌクレオプロテインを摂取した後肢非荷重群(HU+NP),後肢非荷重期間中に荷重負荷を与えた群(HU+Lo),ヌクレオプロテインを摂取し,後肢非荷重期間中に荷重負荷を与えた群(HU+Lo+NP)に分類した。ヌクレオプロテインはゾンデで経口摂取(800 mg/kg/日)させた。また,荷重運動負荷は1時間/日とした。7日間の後肢非荷重の期間終了後,ヒラメ筋を摘出し,急速冷凍して保存した。ミトコンドリア機能の指標としてクエン酸合成酵素(CS)活性,ミトコンドリアでのROS産生の指標としてSOD-2発現量を測定した。また,薄切切片にHematoxylin-Eosin染色を施し,筋線維当たりの筋核数(筋核・筋線維比)を算出した。得られた測定値の統計処理には一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】HU群,HU+NP群及びHU+Lo群のCS活性は,CON群と比較して有意に低値を示した。一方,HU+Lo+NP群ではHU群,HU+NP群,HU+Lo群と比較して有意に高値を示した。HU群,HU+NP群及びHU+Lo群のSOD-2発現量は,CON群と比較して有意に高値を示したが,HU+Lo+NP群ではCON群と比較して有意な変化を示さなかった。HU群,HU+NP群の筋核・筋線維比は,CON群と比較して有意に低値を示したが,HU+Lo+NP群ではHU群と比較して有意に高値を示した。
【考察】不活動は骨格筋ミトコンドリアでの過剰ROSを産生させ,ミトコンドリア機能障害を惹起すると報告されている。本研究においても,後肢非荷重によるCS活性の低下は,SOD-2発現量が増加し,ミトコンドリアでの過剰ROS産生に起因していると考えられる。Xuらの報告(2012)では長期間のヌクレオチド摂取により抗酸化作用を示したが,本研究では後肢非荷重の期間中にヌクレオプロテインを摂取するだけでは,ROS産生量に変化はなく,CS活性を維持することができなかった。本研究では,先行研究と比較して摂取期間が短かったため,ヌクレオプロテイン摂取のみではROS産生量を抑制できなかったと考えられる。一方,後肢非荷重の期間中に荷重運動負荷とヌクレオプロテイン摂取を併用することにより過剰ROS産生及び筋核数の減少を抑制することができた。運動はミトコンドリア膜に存在するヌクレオチド輸送体の発現を活性化させる(Fernstrom, 2003)。このことから荷重運動負荷により抗酸化作用を有するヌクレオチドがミトコンドリア内に入りやすくなり,ROS過剰産生を効果的に抑制したと考えられる。さらに荷重運動負荷とヌクレオプロテイン摂取の併用でCS活性を維持することができた。ROS過剰産生及び筋核数の減少は共にミトコンドリア機能に関連すると報告(Powers, 2012)されていることから,ROS過剰産生及び筋核数の減少を予防することでミトコンドリア機能を維持することができたと考えられる。また,運動負荷とアミノ酸摂取の併用はミトコンドリア新生を促すことからヌクレオプロテインに含まれるアミノ酸もミトコンドリア新生を促し,ミトコンドリア機能維持に寄与したと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】ミトコンドリア機能は筋持久力やADL等に関与するため,臨床的にも非常に重要である。ヌクレオプロテインの摂取と運動療法の併用は不活動期間中の骨格筋におけるミトコンドリア機能低下を軽減する一助となることが示され,理学療法における栄養サポートの重要性を示唆した研究として,意義あるものと考えられる。