[P3-C-0952] 姿勢および骨盤傾斜の違いによる腹部引き込み運動時の腹横筋厚の変化
―超音波診断装置による検討―
キーワード:腹横筋, 腹部引き込み運動, 超音波診断装置
【はじめに,目的】
選択的に腹横筋を収縮させる腹部引き込み運動は,腰痛に対する運動として有用と報告されている。超音波診断装置を用いた研究では,腹横筋は背臥位よりも座位,立位やつま先立ちで腹横筋厚が増大すると報告されている。また,座位や立位では骨盤傾斜角度の違いにより腹横筋厚が異なり,後傾位で腹横筋厚が増大するという報告もある。しかし,姿勢を変化させたときに腰部引き込み運動を行った際の腹横筋厚の変化に関する報告は少なく,どのような姿勢で腹部引き込み運動を行った場合に効果的であるかについては明らかではない。異なる姿勢における腹部引き込み運動時の腹横筋厚の変化を検討することで,腹横筋をより効果的に筋力増強できる運動姿勢が明らかになると考えられる。
本研究の目的は,立位とつま先立ちの異なる姿勢で骨盤傾斜を変化させた時の腹部引き込み運動による腹横筋厚の変化について超音波診断装置を用い非侵襲的に検討することである。
【方法】
Rhoらによると,腹部引き込み運動における腹横筋厚は女性よりも男性のほうが有意に高値であったが,腹横筋厚変化率は女性のほうが高値となったと報告している。そのため,腹部引き込み運動時の腹横筋厚や腹横筋厚変化率について検討する場合は性差を考慮する必要があり,本研究の対象は体幹に整形外科学疾患の既往のない13名の健常男性(年齢26.1±5.3歳,身長173.1±5.2cm,体重62.8±5.2kg)とした。
本研究では,立位とつま先立ちの異なる姿勢の要因,骨盤傾斜の違いの要因の2つの要因における腹部引き込み運動時の腹横筋厚変化率ついて検討した。本研究における腹横筋厚変化率は,腹部引き込み運動時の腹横筋厚を安静時腹横筋厚で除した値である。また,骨盤傾斜については,骨盤前傾を最大にした姿勢(以下,前傾位),立位にて骨盤傾斜を安楽に保った姿勢(以下,中間位),骨盤後傾を最大にした姿勢(以下,後傾位)の3つの水準とした。姿勢に関連した要因については,立位とつま先立ちの2つの水準とした。本研究では,姿勢に関連した2つの水準と骨盤傾斜の3つの水準の合計6つの課題における腹横筋厚変化率を測定した。
腹横筋厚はGEヘルスケア・ジャパン製の超音波診断装置(Venue 40 Musculoskeletal)を用いて測定した。測定の際,8MHzのプローブで撮影を行い,腹横筋の測定部位は,先行研究を参考にして中腋窩線上における肋骨辺縁と腸骨稜の中央部とした。
統計学的な検討は,姿勢の違いと骨盤傾斜の違いの2つの要因おける腹横筋厚変化率について2要因分散分析とBonferroni法によるpost-hoc解析を行った。なお,統計ソフトはSPSS17.0を用いて危険率は5%未満とした。
【結果】
立位における前傾位,中間位,後傾位の腹横筋厚変化率は,1.43±0.43,1.66±0.51,1.42±0.36であった。同様につま先立ちにおける前傾位,中間位,後傾位の腹横筋厚変化率は,1.37±0.19,1.60±0.26,1.33±0.39であった。姿勢と骨盤傾斜の違いによる2要因分散分析の結果では,交互作用は有意ではなかった。また,姿勢の違いの主効果は有意ではなかったが,骨盤傾斜の違いの主効果は有意であった。post-hoc解析の結果では,立位における中間位の値が高値となる傾向がみられたが有意差はなく,つま先立ちの中間位と前傾位,中間位と後傾位との間に有意差がみられた。
【考察】
本研究では,姿勢および骨盤傾斜の違いによって,腹横筋厚変化率に差がみられるのかを検証するために2要因の分散分析を行った。その結果,交互作用は有意ではなかったため,本研究における姿勢と骨盤傾斜の違いの各要因には単独の効果があると考えられた。姿勢の違いの主効果が有意ではなかった結果は,立位とつま先立ちによる腹横筋厚変化率の値が近似していたためと考えられる。一方で,骨盤傾斜の違いの主効果は有意であり,特につま先立ちの中間位の値が前傾位・後傾位と比べて有意に高くなっており,立位についても有意差はみられなかったが同様の傾向を示していた。先行研究より腹部引き込み運動が腹横筋を選択的に収縮させる運動として有用であることを考慮すると,骨盤傾斜を中間位に保った姿勢で腹部引き込み運動を行うことが,腹横筋の効果的な筋収縮を促すために適している可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
腹部引き込み運動にて腹横筋の選択的な運動を行う際には,骨盤傾斜を中間位に保った姿勢で行うことが有効であることを本研究は示唆した。
選択的に腹横筋を収縮させる腹部引き込み運動は,腰痛に対する運動として有用と報告されている。超音波診断装置を用いた研究では,腹横筋は背臥位よりも座位,立位やつま先立ちで腹横筋厚が増大すると報告されている。また,座位や立位では骨盤傾斜角度の違いにより腹横筋厚が異なり,後傾位で腹横筋厚が増大するという報告もある。しかし,姿勢を変化させたときに腰部引き込み運動を行った際の腹横筋厚の変化に関する報告は少なく,どのような姿勢で腹部引き込み運動を行った場合に効果的であるかについては明らかではない。異なる姿勢における腹部引き込み運動時の腹横筋厚の変化を検討することで,腹横筋をより効果的に筋力増強できる運動姿勢が明らかになると考えられる。
本研究の目的は,立位とつま先立ちの異なる姿勢で骨盤傾斜を変化させた時の腹部引き込み運動による腹横筋厚の変化について超音波診断装置を用い非侵襲的に検討することである。
【方法】
Rhoらによると,腹部引き込み運動における腹横筋厚は女性よりも男性のほうが有意に高値であったが,腹横筋厚変化率は女性のほうが高値となったと報告している。そのため,腹部引き込み運動時の腹横筋厚や腹横筋厚変化率について検討する場合は性差を考慮する必要があり,本研究の対象は体幹に整形外科学疾患の既往のない13名の健常男性(年齢26.1±5.3歳,身長173.1±5.2cm,体重62.8±5.2kg)とした。
本研究では,立位とつま先立ちの異なる姿勢の要因,骨盤傾斜の違いの要因の2つの要因における腹部引き込み運動時の腹横筋厚変化率ついて検討した。本研究における腹横筋厚変化率は,腹部引き込み運動時の腹横筋厚を安静時腹横筋厚で除した値である。また,骨盤傾斜については,骨盤前傾を最大にした姿勢(以下,前傾位),立位にて骨盤傾斜を安楽に保った姿勢(以下,中間位),骨盤後傾を最大にした姿勢(以下,後傾位)の3つの水準とした。姿勢に関連した要因については,立位とつま先立ちの2つの水準とした。本研究では,姿勢に関連した2つの水準と骨盤傾斜の3つの水準の合計6つの課題における腹横筋厚変化率を測定した。
腹横筋厚はGEヘルスケア・ジャパン製の超音波診断装置(Venue 40 Musculoskeletal)を用いて測定した。測定の際,8MHzのプローブで撮影を行い,腹横筋の測定部位は,先行研究を参考にして中腋窩線上における肋骨辺縁と腸骨稜の中央部とした。
統計学的な検討は,姿勢の違いと骨盤傾斜の違いの2つの要因おける腹横筋厚変化率について2要因分散分析とBonferroni法によるpost-hoc解析を行った。なお,統計ソフトはSPSS17.0を用いて危険率は5%未満とした。
【結果】
立位における前傾位,中間位,後傾位の腹横筋厚変化率は,1.43±0.43,1.66±0.51,1.42±0.36であった。同様につま先立ちにおける前傾位,中間位,後傾位の腹横筋厚変化率は,1.37±0.19,1.60±0.26,1.33±0.39であった。姿勢と骨盤傾斜の違いによる2要因分散分析の結果では,交互作用は有意ではなかった。また,姿勢の違いの主効果は有意ではなかったが,骨盤傾斜の違いの主効果は有意であった。post-hoc解析の結果では,立位における中間位の値が高値となる傾向がみられたが有意差はなく,つま先立ちの中間位と前傾位,中間位と後傾位との間に有意差がみられた。
【考察】
本研究では,姿勢および骨盤傾斜の違いによって,腹横筋厚変化率に差がみられるのかを検証するために2要因の分散分析を行った。その結果,交互作用は有意ではなかったため,本研究における姿勢と骨盤傾斜の違いの各要因には単独の効果があると考えられた。姿勢の違いの主効果が有意ではなかった結果は,立位とつま先立ちによる腹横筋厚変化率の値が近似していたためと考えられる。一方で,骨盤傾斜の違いの主効果は有意であり,特につま先立ちの中間位の値が前傾位・後傾位と比べて有意に高くなっており,立位についても有意差はみられなかったが同様の傾向を示していた。先行研究より腹部引き込み運動が腹横筋を選択的に収縮させる運動として有用であることを考慮すると,骨盤傾斜を中間位に保った姿勢で腹部引き込み運動を行うことが,腹横筋の効果的な筋収縮を促すために適している可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
腹部引き込み運動にて腹横筋の選択的な運動を行う際には,骨盤傾斜を中間位に保った姿勢で行うことが有効であることを本研究は示唆した。