第50回日本理学療法学術大会

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Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-0958] 腰椎脊柱管狭窄症に対する運動方向で分類した運動療法による治療成績

市川塁 (お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック)

Keywords:腰部脊柱管狭窄症, 運動療法, 運動方向

【はじめに,目的】
腰椎脊柱管狭窄症(lumber canal stenosis:以下LCS)に対する運動療法の方法には様々な報告があり,その中でも腰椎屈曲による前屈体操が効果的であると言われることが多い。しかし,必ずしも前屈体操だけで症状が改善する訳ではないのが現状である。今回われわれはLCSに対し,運動による反応によって運動方向でLCSを分類し,その分類に基づいて運動療法をおこなった。その分類結果と治療成績について報告する。
【方法】
当院にてLCSと診断され,運動療法による治療をおこなった42例を対象とした。男性16例,女性26例,年齢67.2±7.4歳,BMI22.5±3.1であった。運動療法は後屈・前屈・側方の各反復運動で症状(安静時痛・運動時痛・可動域)が改善する運動方向をみつけ,後屈改善型LCSと前屈改善型LCSおよび側方改善型LCSに分類し,それぞれに適した体操を処方した。再診時には上記の評価を繰り返し,運動方向の見直しを行った。疼痛の程度の評価には,Visual Analog Scale(以下VAS)・Roland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)・鎮痛剤使用の有無で評価し,初回と3ヶ月後に実施した。介入効果判定には,ウィルコクソン順位和検定を使用し比較した。
【結果】
初回の運動方向による分類は後屈改善型LCS 28例,前屈改善型LCS 14例,側方改善型LCS 0例であった。3ヵ月の運動方向による分類は後屈改善型LCS 28例,前屈改善型LCS 12例,側方改善型LCS 2例で,分類が変更となった症例は5例であった。VASは初回52.3±24.8点,3ヵ月39.7±28.5点と低下し(p<0.01),RDQは初回6.8±4.2点,3ヵ月4.6±4.5点と低下した(p<0.01)。鎮痛剤の使用は,初回22例(52.4%),3ヵ月11例(26.2%)であった。
【考察】
後屈改善型LCSが最も多かったが,前屈改善型LCSや側方改善型LCSも存在し,経過中に分類が変わった症例もあり,LCSに適切な体操は症例により異なっていた。VAS・RDQともに有意に改善し,鎮痛剤を使用しなくなった症例も11例に認められ,運動方向による分類に基づく運動療法がLCSの疼痛とQOLの改善に有効である可能性が示唆された。
腰椎の屈曲運動・伸展運動の効果やそのメカニズムにはさまざまな報告がある。腰椎アライメントの変化・椎間板の変位・phの変化・椎間板内圧の変化・椎間関節への影響・筋内圧の変化・腰背筋血流動態の変化・関節構成体の拘縮改善等である。本研究では,疼痛の経過の評価にはVAS・RDQ・鎮痛剤使用の有無で評価しているため,疼痛改善の詳細なメカニズムについては不明である。
ただし,今回LCSには後屈改善型,前屈改善型,側方改善型が認められたことから,診断名が同じLCSであっても,症状を引き起こす原因はそれぞれ異なり,その治療の方向も異なることが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
LCSを運動方向で分類し,それに合わせた体操を処方することで,疼痛の程度・QOLを改善できることが示された。また,処方した体操は比較的簡単な体操であるため自主トレーニングにも導入しやすいことから,通院日数の頻度軽減・鎮痛剤の軽減による医療費の軽減や患者様の医療機関への依存を軽減でき患者の自立へとつながる可能性が示された。