第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

股関節・膝関節

Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-1002] 足部柔軟性の違いが前方リーチ距離と足圧中心位置に与える影響

岩永竜也1, 亀山顕太郎1, 福岡進2 (1.松戸整形外科病院リハビリテーションセンター, 2.せんだメディカルクリニック)

Keywords:足部柔軟性, 前方リーチ距離, 足圧中心

【目的】前方リーチ距離は,立位にて支持基底面を維持しながら上肢を最大限に前方に伸ばした距離であり,そのとき足圧中心が前方に移動できるほど,前方リーチ距離が大きくなると思われる。足部柔軟性が高いと足部の支持性が低下し,前方リーチ時にも足圧中心前方移動が困難と思われる。足趾把持力,足趾圧迫力と前方リーチ距離,足圧中心に関する報告は散見されるが,足部柔軟性が前方リーチ距離と足圧中心位置に及ぼす影響の報告はみられない。本研究の目的は,足部柔軟性が前方リーチ距離と足圧中心位置に及ぼす影響を明らかにすることである。

【方法】対象は,整形外科的疾患および神経系に障害を有さない健常成人29名(男性18名,女性11名,年齢29.8±6.7歳,身長165.3±6.8cm,体重59.0±9.1kg,BMI 21.5±2.2,足長24.1±1.4cm)とした。また,過度な足部や足趾の変形のある者,左右で足部柔軟性が異なる者は除外した。被験者足部の柔軟性評価には,足部の柔軟性と固定性に関与している横足根関節の可動性評価を用いた。評価方法は,被験者は長座位とし,同一検者が距骨下関節を中間位に保持した状態で後足部底側面に対し,横足根関節より遠位を把持した前足部を徒手にて最大回内させた。前足部底側面が後足部底側面を越えて回内する場合を前足部の柔軟性が高い前足部外反位群(以下;外反群),後足部底側面を越えない場合を前足部の柔軟性が低い前足部内反位群(以下;内反群)とし,2群(外反群10名,内反群19名)に分けた。被験者には圧分布測定装置(アニマ社製MD-1000)上で,自然立位より両肩関節を90°屈曲した位置を開始肢位とし,上肢の高さを一定に保ちながら前方に最大限リーチ動作をさせた。この時の最大前方リーチ距離と踵骨隆起より足圧中心が最大前方移動したときの位置(以下;COP位置)を測定した。このとき踵が接地面より離れないように指示した。測定時間は10秒間とした。前方リーチ動作の測定は3回行い,平均値を採用した。前方リーチ距離を身長で,COP位置を足長でそれぞれ正規化した。統計的手法はSPSS Ver17.0を使用し,正規化した外反群と内反群の前方リーチ距離とCOP位置を対応のないt検定で2群間を比較した。また,前方リーチ距離とCOP位置との関係性はPearsonの相関係数を求めた。有意水準は5%とした。

【結果】正規化した前方リーチ距離は,外反群0.13±0.03,内反群0.17±0.01となり,両群間に有意差がみられた。正規化したCOP位置は,外反群0.56±0.04,内反群0.63±0.04となり,両群間に有意差がみられた。前方リーチ距離,COP位置共に外反群に比し,内反群では大きくなった。これらを被験者の平均に近い身長165cmと足長24.0cmを例に換算すると,前方リーチ距離では外反群は内反群に比し,6.60cm短くなり,COP位置では外反群は内反群に比し1.68cmが後方に位置した。前方リーチ距離とCOP位置間には,中等度の相関が認められた(r=0.48,p<0.01)。

【考察】先行研究では足趾把持力,足趾圧迫力と前方リーチ距離,COP位置との関係について散見される。本研究では足部柔軟性に着目し研究を行った結果,前方リーチ距離,COP位置共に,足部の柔軟性が関与していることが示唆された。柔軟性の高い足部(外反群)は,足部の支持性が不十分なため足圧中心の前方移動が困難になると思われる。また,前方リーチ距離とCOP位置との間に中等度の相関もみられ,COP位置の前方移動と前方リーチ距離の増大に関連がみられた。これより前方リーチや前足部への荷重が困難な症例に足部柔軟性を評価する必要があると考えた。しかし,前方リーチ距離とCOP位置との間に強い相関が認められなかった。これは足部機能や体幹機能など他の因子が影響するからと考えられた。今回の結果より前方リーチ距離とCOP位置は足部柔軟性に影響されることが示唆され,理学療法で足部へのアプローチによって,前方リーチ距離とCOP位置は変化する可能性を示唆された。

【理学療法学研究としての意義】
前方リーチ動作や足圧中心の前方移動には足部柔軟性が関与していることから,前方へのバランス不良例やスポーツなどで重心を前方に移動できない症例は,足部柔軟性の評価が必要であることを示唆した。また前方リーチと足圧中心位置の相関関係から,理学療法で変化させられる可能性があると思われる。