第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター3

脳損傷理学療法8

Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-1029] Berg Balance Scaleにおけるテント上・テント下病変の違いと改善時期についての検討

―回復期リハビリテーション病棟脳卒中患者を対象として―

宮原拓也, 武田尊徳 (上尾中央総合病院リハビリテーション技術科)

Keywords:脳卒中, Berg Balance Scale, 改善時期

【はじめに,目的】当院ではリハビリテーション介入においてセラピスト間の差を減じることを目的にフローチャートとステップアップ方式を用いた疾患別の標準プログラムを作成している。過去の検討を踏まえ脳卒中に対する標準プログラムにおいて2つの課題がある。一つは,Berg Balance Scale(以下:BBS)細項目によるステップアップ基準を設けているが改善の目安となる日数がないことである。二つ目は,運動麻痺・運動失調症によるプログラムの区分がないことである。運動麻痺と運動失調症では病巣や臨床所見が異なるため,別々のプログラムが必要となる可能性があるがその検討ができていない。これらの課題に対し,バランス機能の経過や改善時期に関する先行研究や,運動麻痺と運動失調症,テント上とテント下でのバランス機能の比較に関する先行研究を調査したが見られなかった。そこで,本研究においてバランス機能の経時的変化(入棟時,2ヶ月目,3ヶ月目)の特徴と,テント上病変・テント下病変の違いがバランス機能に及ぼす影響を明らかにすることを研究目的とした。
【方法】対象はA病院回復期リハビリテーション病棟(以下:回復期病病棟)にて2008年11月から2014年4月までに退院した脳卒中症例512例のうち,以下の除外基準①から④に該当しなかった139例(脳出血65名,脳梗塞74名)とした。除外基準は,①発症から入棟までが61日以上のもの,②評価時期が3ヶ月目に満たなかったもの,③評価時期が4か月目を超過したもの,④データ不備等のあったものとした。情報収集は,診療録等から後方視的に基本情報(性別・年齢・診断名・発症から入棟までの期間・回復期病棟入棟期間・在院日数),Functional independence measure(以下:FIM),BBSを収集した。統計解析は,対象を診断名等よりテント上群(116名)とテント下群(23名)に分け,基本情報と入棟時FIM運動項目合計・認知項目合計,入棟時BBS合計を用いて二群比較を実施した。その際,正規性を示したパラメトリックデータに対しては対応のないT検定,正規性を示さなかったパラメトリックデータとノンパラメトリックデータに対してはU検定を実施した。その後,すべてのBBS細項目について,テント上・テント下病変の違い,バランス機能の改善時期,両者の関係を検討するために二元配置分散分析を実施した。その際に従属変数を各BBS細項目(14種)とし,要因を病巣(テント上群・テント下群)と評価時期(入棟時・2ヶ月目・3ヶ月目)とした。その後,評価時期で主効果の認められたBBS細項目ではTukey法を用いて多重比較を実施した。統計解析にはSPSSver.21.0を用いた。
【結果】二群比較の結果,有意差を示した項目は発症から入棟までの期間,入棟時FIM認知項目合計であり,入棟時BBS合計では有意差を示さなかった。二元配置分散分析の結果,交互作用を示したBBS細項目はなかった。病巣で主効果を示した従属変数はタンデムとなり,評価時期で主効果を示した従属変数はすべてのBBS細項目であった。多重比較の結果,すべての評価時期において有意差を示したのはタンデム,入棟時と3ヶ月目の間で有意差を示したのは段差踏み替え,その他の項目では,入棟時と2ヶ月目,入棟時と3ヶ月目で有意差を示した。
【考察】二群比較の結果から,発症から入棟までの期間,入棟時FIM認知項目合計が結果に影響を与えた可能性があるが,入棟時BBS合計では有意差は見られずバランス機能は類似していたと考える。二元配置分散分析の結果,交互作用は見られずテント上・テント下病変の違いはBBSの経過に影響を与えないと考えられる。また,病巣で主効果を示した項目はタンデムであったが,類似する支持面を狭小化した課題(片脚立位)では差はみられずバランス課題の特徴には言及できなかった。評価時期に対する多重比較の結果からBBS改善時期を検討すると,すべての評価時期間で有意差を示したタンデムは2ヶ月間改善し続け,入棟時と3ヶ月目のみで有意差を示した段差踏み替えは2ヶ月かけて改善した項目であった。その他の項目では,入棟時と2ヶ月目で有意差を示したが2ヶ月目と3ヶ月目では有意差を示さず入棟後1ヶ月でより改善したと考えられる。本研究より,テント上・テント下病変の違いはBBS得点や経過に影響を及ぼさないと考えられた。BBS改善時期では,タンデムや段差踏み替えといった比較的難易度の高い課題は1ヶ月以降にも改善するがその他の項目は入棟後1ヶ月の間に改善するという特徴がみられた。
【理学療法学研究としての意義】バランス機能改善の時間的目安設定の基礎資料になると考える。