[P3-C-1035] 急性期脳卒中患者の初回評価における退院時の歩行自立可否の予測
NIHSS,上田式12段階片麻痺回復グレードを用いて歩行自立カットオフ値の算出
キーワード:急性期脳卒中, NIHSS, 歩行予測
【はじめに,目的】脳卒中発症直後の理学療法は,合併症や重症度などから医師の指示のもと床上から開始となり,測定可能な評価項目が制限され,早期に目標設定が困難なことが多い。当院の脳卒中急性期における初回評価は,神経症状の重症度の評価法としてNational Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),下肢運動麻痺の評価としてBrunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)より詳細である上田式12段階片麻痺回復グレード(以下,12グレード)などを用いて仰臥位で測定可能な評価を行っている。また,急性期病院では在院日数の短縮化の面から,脳卒中を含め全般的に,早期に自宅退院や回復期病院などの転院が多く,退院時の歩行獲得を予測することが困難である。以上より,脳卒中発症早期から歩行自立を含めた明確な目標を設定し理学療法を進めることが求められる。そこで,NIHSS,12グレードを含めた初回評価から退院時の歩行自立可否に関連する因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】2013年1月から2014年8月まで附属4病院に入院し,発症7日以内に理学療法が開始された初発脳卒中患者74名(年齢66.1±12.2歳,男性51名,女性23名,右片麻痺37名,左片麻痺37名,脳梗塞52名,脳出血22名,発症からの初回評価日2.52±1.13日,在院日数22.6±11.0日)を対象とした。除外対象は,くも膜下出血,入院前の歩行が非自立,在院日数が10日以内とした。初回評価項目は,年齢,Glasgow Coma Scale合計点(以下,GCS),NIHSS,下肢の12グレード,Ability for Basic Movement Scale2(以下,ABMS)の寝返り,起居,座位保持(1禁止~6完全自立),Barthel Index合計点(以下,BI)とした。退院時の歩行自立度は,歩行が監視または室内歩行自立以上を歩行自立群(以下,自立群),歩行が不能または介助が必要な者を歩行非自立群(以下,非自立群)とした。各項目は附属4病院共通評価表より後方視的に調査した。解析は,初回評価項目に対し自立群,非自立群の2群間で,χ2検定,Mann-WhitenyのU検定,対応のないt検定を該当項目に用い比較検討を行った。単変量解析で有意差を認めた項目を説明変数,退院時の歩行自立,非自立を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った。なお投入する説明変数は多重共線性を考慮し,説明変数間同士でVariance Inflation Factor(以下,VIF)10以上の高い値を認めた項目があれば除外した。またロジスティック回帰分析で抽出された項目について,receiver operating characteristic(以下,ROC)曲線を作成し,Youden指数が最大となるカットオフ値を抽出した。統計はSPSSver.20を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】自立群は43名,非自立群は31名であった。単変量解析の結果(自立群中央値/非自立群中央値),年齢(平均値65.6/66.7),GCS(15/14),NIHSS(3/14),12グレード(10/3),ABMS寝返り(6/2),起居(4/1),座位保持(5/1),BI(45/0)のいずれも2群間に有意差を認めた。説明変数間同士で共線性を診断したがVIFはいずれも4以下であった。ロジスティック回帰分析の結果,NIHSS(オッズ比1.232,95%信頼区間1.05-1.43),12グレード(オッズ比1.32,95%信頼区間1.03-1.69)に有意差が認められ,判別的中率は87.8%であった。ROC曲線を作成し,NIHSSはカットオフ値5(感度86.0%,特異度87.1%,AUC0.903),12グレードはカットオフ値7(感度95.3%,特異度77.4%,AUC0.863)であった。
【考察】退院時の歩行自立に関連する初回評価の因子は,脳卒中の重症度を表すNIHSS(カットオフ値5)及び下肢の運動麻痺を示す12グレード(カットオフ値7)であった。12グレードの回復グレード7は便宜的にBRSIVと同等とされ,初回に下肢麻痺が軽度から中等度でも歩行自立が可能であることが示された。八木らは急性期脳梗塞患者における退院先における因子としてNIHSSが抽出され,カットオフ値は最重症時の3.5点であったと報告している。一方,本研究のカットオフ値は5点でアウトカムが異なるが,歩行獲得や自宅退院は急性期脳卒中患者の目標の一つであり,1ヶ月弱の在院期間でこれらを達成するにはNIHSSのような神経症状の重症度は軽症であることが必要であると考えられた。また,NIHSS及び12グレードのカットオフ値以下であるが歩行を獲得できない者は,高次脳機能障害や既往で整形外科疾患を有する者がほとんどであった。
【理学療法学研究としての意義】脳卒中発症直後の安静度が限られるなかで,仰臥位で測定可能なNIHSS,12グレードが抽出されたことは,より早期に退院時の歩行予測を含めた理学療法の目標設定が可能となると考えられた。
【方法】2013年1月から2014年8月まで附属4病院に入院し,発症7日以内に理学療法が開始された初発脳卒中患者74名(年齢66.1±12.2歳,男性51名,女性23名,右片麻痺37名,左片麻痺37名,脳梗塞52名,脳出血22名,発症からの初回評価日2.52±1.13日,在院日数22.6±11.0日)を対象とした。除外対象は,くも膜下出血,入院前の歩行が非自立,在院日数が10日以内とした。初回評価項目は,年齢,Glasgow Coma Scale合計点(以下,GCS),NIHSS,下肢の12グレード,Ability for Basic Movement Scale2(以下,ABMS)の寝返り,起居,座位保持(1禁止~6完全自立),Barthel Index合計点(以下,BI)とした。退院時の歩行自立度は,歩行が監視または室内歩行自立以上を歩行自立群(以下,自立群),歩行が不能または介助が必要な者を歩行非自立群(以下,非自立群)とした。各項目は附属4病院共通評価表より後方視的に調査した。解析は,初回評価項目に対し自立群,非自立群の2群間で,χ2検定,Mann-WhitenyのU検定,対応のないt検定を該当項目に用い比較検討を行った。単変量解析で有意差を認めた項目を説明変数,退院時の歩行自立,非自立を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った。なお投入する説明変数は多重共線性を考慮し,説明変数間同士でVariance Inflation Factor(以下,VIF)10以上の高い値を認めた項目があれば除外した。またロジスティック回帰分析で抽出された項目について,receiver operating characteristic(以下,ROC)曲線を作成し,Youden指数が最大となるカットオフ値を抽出した。統計はSPSSver.20を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】自立群は43名,非自立群は31名であった。単変量解析の結果(自立群中央値/非自立群中央値),年齢(平均値65.6/66.7),GCS(15/14),NIHSS(3/14),12グレード(10/3),ABMS寝返り(6/2),起居(4/1),座位保持(5/1),BI(45/0)のいずれも2群間に有意差を認めた。説明変数間同士で共線性を診断したがVIFはいずれも4以下であった。ロジスティック回帰分析の結果,NIHSS(オッズ比1.232,95%信頼区間1.05-1.43),12グレード(オッズ比1.32,95%信頼区間1.03-1.69)に有意差が認められ,判別的中率は87.8%であった。ROC曲線を作成し,NIHSSはカットオフ値5(感度86.0%,特異度87.1%,AUC0.903),12グレードはカットオフ値7(感度95.3%,特異度77.4%,AUC0.863)であった。
【考察】退院時の歩行自立に関連する初回評価の因子は,脳卒中の重症度を表すNIHSS(カットオフ値5)及び下肢の運動麻痺を示す12グレード(カットオフ値7)であった。12グレードの回復グレード7は便宜的にBRSIVと同等とされ,初回に下肢麻痺が軽度から中等度でも歩行自立が可能であることが示された。八木らは急性期脳梗塞患者における退院先における因子としてNIHSSが抽出され,カットオフ値は最重症時の3.5点であったと報告している。一方,本研究のカットオフ値は5点でアウトカムが異なるが,歩行獲得や自宅退院は急性期脳卒中患者の目標の一つであり,1ヶ月弱の在院期間でこれらを達成するにはNIHSSのような神経症状の重症度は軽症であることが必要であると考えられた。また,NIHSS及び12グレードのカットオフ値以下であるが歩行を獲得できない者は,高次脳機能障害や既往で整形外科疾患を有する者がほとんどであった。
【理学療法学研究としての意義】脳卒中発症直後の安静度が限られるなかで,仰臥位で測定可能なNIHSS,12グレードが抽出されたことは,より早期に退院時の歩行予測を含めた理学療法の目標設定が可能となると考えられた。