[P3-C-1054] 片麻痺患者の麻痺側機能がFIMの得点に与える影響について
Keywords:FIM, 片麻痺, 麻痺側機能
【はじめに,目的】
我が国では,“しているADL”を評価する方法として多くの臨床現場でFIMが用いられ,患者の実際の生活におけるADL自立度が把握できる有用な評価法である。FIMとは,1983年にGrangerらによって開発された機能的自立度評価法である。FIMは,運動項目13項目と認知項目5項目を加えた合計18項目から構成されている。総得点は完全自立で126点の満点となり,全介助では最低点の18点となる。先行研究では,SIASの麻痺側運動機能がFIMの移動・移乗の得点に相関することや視空間失認がFIMの社会的認知の得点に相関があること,上肢麻痺と歩行能力がFIMの得点に相関することなどが報告されている。しかし,FIMの運動項目に関して麻痺側のBrunnstrom stage(以下Br.stage),触覚が具体的にどの程度関係しているかの報告は少ない。本研究は,片麻痺患者の麻痺側の運動および感覚機能別にみるFIM運動項目の得点への影響について明らかにし,自立のためによりよい効果予測や治療の一助とするものである。
【方法】
対象はA県内3ヶ所の病院(通院及び入院患者)及び老人保健施設(通所利用者)等の片麻痺患者30名とした。FIMに沿ったアンケート用紙を用いて合計得点を算出した。合計得点が高いほど自立度が高いと判断した。麻痺側運動機能は,Br.stageに沿って作成したアンケート用紙を用いて上肢・下肢を6段階で評価した。麻痺側感覚機能は,触覚をアンケートで上肢・下肢ともに評価した。触覚は6段階評価(0=脱出~5=正常)とした。全ての項目を得点化し,得点が高いほど麻痺側機能良好と判断した。統計処理は,FIMの得点と麻痺側機能との関係をスピアマンの順位相関分析にて検討した。また従属変数をFIMの得点,独立変数を麻痺側機能の2項目として重回帰分析(ステップワイズ法)にて因果関係を検討した。統計ソフトはSPSS(バージョン20)を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
アンケートに回答した者は18名(男性12名,女性6名)で年齢は74.0±9.4歳であった。各項目の最頻値は感覚上下肢3,上下肢Br.stage5,手指Br.stage 6であった。FIM運動項目得点の平均は77.3±8.8点であった。下肢Br.stageとFIMの運動項目との間にはρ=0.490(p<0.05)となり,やや強い相関がみられた。そして重回帰分析(ステップワイズ法)ではF(1,16)=6.297(p<0.05)とモデルの有意性がみられた。標準回帰係数は下肢Br.stageのみ0.531(p<0.05)と有意差がみられたが,他の項目はみられなかった。
【考察】
下肢Br.stageのみFIM運動項目の得点との相関が有意にみられた。下肢の運動麻痺は移動,移乗などの動作遂行に大きく関与するため,ADLに影響したものと考えられた。上肢を使用した動作には感覚障害,運動麻痺が生じた場合でも健側で達成できる動作が多く,下肢感覚機能は視覚による代償である程度補えるため得点への影響が少ないと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
麻痺側機能別にFIMの得点を予測することができ,患者のADLに対する介入方法選択の一助になると考えられる。
我が国では,“しているADL”を評価する方法として多くの臨床現場でFIMが用いられ,患者の実際の生活におけるADL自立度が把握できる有用な評価法である。FIMとは,1983年にGrangerらによって開発された機能的自立度評価法である。FIMは,運動項目13項目と認知項目5項目を加えた合計18項目から構成されている。総得点は完全自立で126点の満点となり,全介助では最低点の18点となる。先行研究では,SIASの麻痺側運動機能がFIMの移動・移乗の得点に相関することや視空間失認がFIMの社会的認知の得点に相関があること,上肢麻痺と歩行能力がFIMの得点に相関することなどが報告されている。しかし,FIMの運動項目に関して麻痺側のBrunnstrom stage(以下Br.stage),触覚が具体的にどの程度関係しているかの報告は少ない。本研究は,片麻痺患者の麻痺側の運動および感覚機能別にみるFIM運動項目の得点への影響について明らかにし,自立のためによりよい効果予測や治療の一助とするものである。
【方法】
対象はA県内3ヶ所の病院(通院及び入院患者)及び老人保健施設(通所利用者)等の片麻痺患者30名とした。FIMに沿ったアンケート用紙を用いて合計得点を算出した。合計得点が高いほど自立度が高いと判断した。麻痺側運動機能は,Br.stageに沿って作成したアンケート用紙を用いて上肢・下肢を6段階で評価した。麻痺側感覚機能は,触覚をアンケートで上肢・下肢ともに評価した。触覚は6段階評価(0=脱出~5=正常)とした。全ての項目を得点化し,得点が高いほど麻痺側機能良好と判断した。統計処理は,FIMの得点と麻痺側機能との関係をスピアマンの順位相関分析にて検討した。また従属変数をFIMの得点,独立変数を麻痺側機能の2項目として重回帰分析(ステップワイズ法)にて因果関係を検討した。統計ソフトはSPSS(バージョン20)を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
アンケートに回答した者は18名(男性12名,女性6名)で年齢は74.0±9.4歳であった。各項目の最頻値は感覚上下肢3,上下肢Br.stage5,手指Br.stage 6であった。FIM運動項目得点の平均は77.3±8.8点であった。下肢Br.stageとFIMの運動項目との間にはρ=0.490(p<0.05)となり,やや強い相関がみられた。そして重回帰分析(ステップワイズ法)ではF(1,16)=6.297(p<0.05)とモデルの有意性がみられた。標準回帰係数は下肢Br.stageのみ0.531(p<0.05)と有意差がみられたが,他の項目はみられなかった。
【考察】
下肢Br.stageのみFIM運動項目の得点との相関が有意にみられた。下肢の運動麻痺は移動,移乗などの動作遂行に大きく関与するため,ADLに影響したものと考えられた。上肢を使用した動作には感覚障害,運動麻痺が生じた場合でも健側で達成できる動作が多く,下肢感覚機能は視覚による代償である程度補えるため得点への影響が少ないと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
麻痺側機能別にFIMの得点を予測することができ,患者のADLに対する介入方法選択の一助になると考えられる。