[P3-C-1084] 地域在住一般中高年女性の年代別による運動機能の変化及び転倒歴との関連について
キーワード:高齢者, 運動機能, 転倒予防
【はじめに】加齢に伴う運動機能の低下はADLの低下や転倒を招き,容易に要支援・要介護状態になることが指摘されており,運動機能低下予防は喫緊の課題である。しかし各地域で健康増進及び転倒予防のための事業が盛んに行われている一方で,介護予防事業における健康指導に際して性差や年齢の区別なく画一的な内容が指導され,十分な配慮が不足している場合が多いとの報告(中ら,1997)もある。そこで本研究の目的は,東京都M市において効果的な転倒予防プログラム立案のために,東京都M市在住の一般中高年女性の年代別による運動機能の変化及び転倒歴との関連を明らかにすることとした。
【方法】2012年10月~2014年9月までに東京都M市O地区において開催された歩く力測定会及び地域介護予防教室に参加した者のうち女性73名(年齢:73±6.4歳,身長:150.4±6.1cm,体重:50.6±7.9kg)を対象とした。運動機能は①等尺性膝伸展筋力体重比②30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)③握力④Timed Up Go Test(以下,TUGT)⑤開眼片脚立ちとした。①については,端坐位膝90°屈曲位にてアニマ社製μ-tasを用いて等尺性膝伸展筋力を左右それぞれ2回測定し,左右の最大値の平均値を体重で除した値を用いた。転倒歴については測定日に参加者が記入した基本チェックリストの過去1年以内の転倒歴を尋ねる項目を用いた。運動機能測定結果と年齢との関係についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。各運動機能測定結果の各年代(60代,70代,80代)の群間比較についてはTukey検定を用いた。各運動機能結果と転倒との関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討した。統計解析には統計ソフトR3.0.0を用い,統計学的有意水準5%未満とした。
【結果】年齢との間に有意な相関を示したのは等尺性膝伸展筋力体重比(rho=-0.30),TUGT(rho=0.53),握力(rho=-0.43),開眼片脚立ち(rho=-0.517)であり,CS-30は有意な相関は認められなかった。等尺性膝伸展筋力体重比の平均値は,60代で0.38±0.10kgf/kg,70代で0.37±0.11kgf/kg,80代で0.32±0.08kgf/kgあった。CS-30の平均値は,60代で17.8±4.6回,70代で17.5±4.1回,80代で16.0±6.5回であった。握力の平均値は,60代で23.1±3.3kg,70代で20.9±3.4kg,80代で18.3±5.9kgあった。TUGTの平均値は,60代で6.59±1.2秒,70代で7.22±1.31秒,80代で8.64±1.67秒であった。開眼片脚立ちの平均値は,60代で51.1±16.2秒,70代で43.7±19.6秒,80代で19.4±21.9秒であった。TUGTにおいて60代と80代,70代と80代,握力において60代と80代,開眼片脚立ちにおいて60代と70代,70代と80代,60代と80代との間に有意差が認められた。各運動機能測定結果と転倒歴との間には有意な関連は認められなかった。
【考察】運動機能測定項目5項目のうち,CS-30を除いた4項目において年齢との相関が認められた。年代別にみると動的バランステストであるTUGTは60代と70代の間では有意な差が認められなかったが,静的バランステストである開眼片脚立ちテストでは60代から70代の間に有意にその能力が低下しており,動的バランスに先んじて静的バランスの能力が早期から低下する可能性が示唆された。一方で,下肢筋力に関連する等尺性膝伸展筋力体重比,CS-30に関しては年代毎における有意差が認められなかった。一般中高年女性の加齢による運動機能への影響を評価する方法としては,筋力測定より開眼片足立ちテストが鋭敏に評価できる可能性が示唆された。各運動機能測定結果と転倒歴との間には有意な関連は認められず,本研究から転倒の原因を明らかにすることはできなかった。高齢者に於いて運動機能レベルが高いにも関わらず転倒している場合は二重課題遂行能力の低下との関連が指摘(山田2012)されており,転倒予防のためには運動機能検査だけでなく二重課題遂行能力などの認知機能検査も視野に入れて評価項目を再検討する必要があると考えられた。本研究の限界として,対象者数が73名と少ないことが上げられ,本研究の結果を一般化するには注意が必要である。今後は対象者数を増やし,年代別の運動機能の変化と転倒歴との関係を検討するとともに地域に合わせた転倒予防プログラムを作成していきたい。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士として地域の健康増進・介護予防に関わるに当たり,その地域の年代別の運動機能特性を考慮したうえで運動プログラムを作成することが必要である。本研究の結果は東京都M市における運動プログラム作成の基礎資料になると考えられる。
【方法】2012年10月~2014年9月までに東京都M市O地区において開催された歩く力測定会及び地域介護予防教室に参加した者のうち女性73名(年齢:73±6.4歳,身長:150.4±6.1cm,体重:50.6±7.9kg)を対象とした。運動機能は①等尺性膝伸展筋力体重比②30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)③握力④Timed Up Go Test(以下,TUGT)⑤開眼片脚立ちとした。①については,端坐位膝90°屈曲位にてアニマ社製μ-tasを用いて等尺性膝伸展筋力を左右それぞれ2回測定し,左右の最大値の平均値を体重で除した値を用いた。転倒歴については測定日に参加者が記入した基本チェックリストの過去1年以内の転倒歴を尋ねる項目を用いた。運動機能測定結果と年齢との関係についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。各運動機能測定結果の各年代(60代,70代,80代)の群間比較についてはTukey検定を用いた。各運動機能結果と転倒との関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討した。統計解析には統計ソフトR3.0.0を用い,統計学的有意水準5%未満とした。
【結果】年齢との間に有意な相関を示したのは等尺性膝伸展筋力体重比(rho=-0.30),TUGT(rho=0.53),握力(rho=-0.43),開眼片脚立ち(rho=-0.517)であり,CS-30は有意な相関は認められなかった。等尺性膝伸展筋力体重比の平均値は,60代で0.38±0.10kgf/kg,70代で0.37±0.11kgf/kg,80代で0.32±0.08kgf/kgあった。CS-30の平均値は,60代で17.8±4.6回,70代で17.5±4.1回,80代で16.0±6.5回であった。握力の平均値は,60代で23.1±3.3kg,70代で20.9±3.4kg,80代で18.3±5.9kgあった。TUGTの平均値は,60代で6.59±1.2秒,70代で7.22±1.31秒,80代で8.64±1.67秒であった。開眼片脚立ちの平均値は,60代で51.1±16.2秒,70代で43.7±19.6秒,80代で19.4±21.9秒であった。TUGTにおいて60代と80代,70代と80代,握力において60代と80代,開眼片脚立ちにおいて60代と70代,70代と80代,60代と80代との間に有意差が認められた。各運動機能測定結果と転倒歴との間には有意な関連は認められなかった。
【考察】運動機能測定項目5項目のうち,CS-30を除いた4項目において年齢との相関が認められた。年代別にみると動的バランステストであるTUGTは60代と70代の間では有意な差が認められなかったが,静的バランステストである開眼片脚立ちテストでは60代から70代の間に有意にその能力が低下しており,動的バランスに先んじて静的バランスの能力が早期から低下する可能性が示唆された。一方で,下肢筋力に関連する等尺性膝伸展筋力体重比,CS-30に関しては年代毎における有意差が認められなかった。一般中高年女性の加齢による運動機能への影響を評価する方法としては,筋力測定より開眼片足立ちテストが鋭敏に評価できる可能性が示唆された。各運動機能測定結果と転倒歴との間には有意な関連は認められず,本研究から転倒の原因を明らかにすることはできなかった。高齢者に於いて運動機能レベルが高いにも関わらず転倒している場合は二重課題遂行能力の低下との関連が指摘(山田2012)されており,転倒予防のためには運動機能検査だけでなく二重課題遂行能力などの認知機能検査も視野に入れて評価項目を再検討する必要があると考えられた。本研究の限界として,対象者数が73名と少ないことが上げられ,本研究の結果を一般化するには注意が必要である。今後は対象者数を増やし,年代別の運動機能の変化と転倒歴との関係を検討するとともに地域に合わせた転倒予防プログラムを作成していきたい。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士として地域の健康増進・介護予防に関わるに当たり,その地域の年代別の運動機能特性を考慮したうえで運動プログラムを作成することが必要である。本研究の結果は東京都M市における運動プログラム作成の基礎資料になると考えられる。