第50回日本理学療法学術大会

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ポスター3

予防理学療法6

2015年6月7日(日) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-1087] 二次予防事業対象者における介護予防教室終了後の追跡調査

細野健太 (医療法人社団みのりの会田島医院)

キーワード:二次予防事業対象者, 介護予防教室, 追跡調査

【目的】
二次予防事業対象者に対し介護予防を図るため,介護予防教室に関する研究は数多く紹介されている。筆者らも二次予防事業対象者に3ヶ月間の介護予防教室の効果を検証し,体幹筋力,下肢筋力,歩行能力およびバランス能力の向上を認め,運動器機能の向上に関して介護予防教室の有用性を示した。二次予防事業を対象とした研究の多くは3ヶ月以内の期間が多いが,その後の追跡調査を行った研究は少なく,介護予防教室終了後に介護保険の認定を予防できているかは不明である。介護予防を検証するためには,介護予防教室前後の比較のみではなく,長期的な経過を調査する必要がある。今回は介護予防教室終了後に介護保険に認定した者と非認定者の違いを明らかにすることを目的としてアンケート調査を行った。
【方法】
対象は介護予防教室を終了し,1年以上経過している二次予防事業対象者70名(男性22名,女性48名)とした。年齢は75.1±7.3歳,身長は152.0±6.5cm,体重は52.8±8.3kgであった。参加者全員が介護予防教室開始1年以内に転倒をしていた。介護予防教室は1回120分間の運動器機能向上プログラムを週に1回の頻度で3ヶ月間実施した。来室時に問診,血圧測定を行い,運動はストレッチングを中心としたウォーミングアップ,自宅で行えるような筋力強化運動,レクリエーションとして平衡性や敏捷性の要素を取り入れたトレーニングを行い,最後に整理運動を行い終了とした。適宜水分補給や休憩を挟みながら実施した。身体機能評価は体幹屈曲・伸展筋力,膝伸展筋力,10m歩行時間,TUGT,片脚立位時間を測定した。アンケート調査の項目は現在の介護保険認定の有無,介護予防教室終了後における運動習慣の有無および転倒発生の有無とした。運動習慣の有無の判定基準は日常生活以外に1週間のうち合計1時間以上運動を行っていることとし,運動の内容は規定しなかった。
【結果】
70名へのアンケート調査の結果,58名より回答を得た(有効回答率82.9%)。現在の介護保険認定群は15名(25.9%:男性7名,女性8名),非認定群は43名(74.1%:男性10名,女性33名)であった。介護予防教室終了後に運動を継続していたのは認定群8名(53.3%:男性3名,女性5名),非認定群35名(81.4%:男性10名,女性25名)であり,転倒が発生したのは認定群6名(40.0%:男性2名,女性4名),非認定群13名(30.2%:男性2名,女性11名)であった。介護予防教室終了後の体幹屈曲・伸展筋力,膝伸展筋力,10m歩行時間,TUGT,片脚立位時間に有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】
今回の介護予防教室は3ヶ月間と決められている。介護予防教室の目的は,QOLの改善,生活機能の向上により,要支援,要介護認定に移行する期間を引き延ばし,要介護にならないような高齢者を増やしていくことである。地域高齢者におけるADL障害の発生を追跡調査した研究では,年齢,下肢機能,身体活動,慢性疾患などが予測因子としてあげられている。本研究はADL障害の発生ではなく介護保険認定の有無で調査したが,介護予防教室終了後に体幹屈曲・伸展筋力,膝伸展筋力,10m歩行時間,TUGT,片脚立位時間に有意差を認めた。また,介護予防教室では歩行能力,バランス能力のような身体をコントロールする能力は重要な要素かもしれないと考える。しかし,運動を継続していても介護保険の認定を受けた対象者もいた。木村らは活発な運動がADL障害の発生と関与していると述べており,今回のアンケート調査では運動内容は規定していなかったが,介護予防にはある程度の運動強度が求められると考える。アンケート結果から介護予防教室終了後でも約67%の方が運動を継続していたと答えていた。小池らは教室の印象が以降の運動習慣に関係するとし,レクリエーションプログラムは重要な役割を担うと報告している。今回の介護予防教室はアンケート結果からも,満足度は高く,今後も運動を継続していきたいという内容で,高齢者の健康増進に寄与できるものであると考えている。今後は対象者を増やし,さらに長期的に追跡調査を行うとともに,高齢者に無理なく継続できる運動を模索し,効果的な介護予防を提供していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
介護予防の実態の理解と介護予防のための運動プログラムに役立つデータを示せたと考える。