第50回日本理学療法学術大会

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ポスター3

臨床教育・管理運営

2015年6月7日(日) 13:10 〜 14:10 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-1143] 当院リハビリテーション部における専門職連携教育の取り組み

~ポートフォリオシートを用いての成功体験の共有~

寺山雅人, 公文久見, 川田恵, 亀井ゆかり, 橋本浩実, 小根田夏子, 佐伯麻衣, 白方淳, 福田紗代, 板谷舞, 西出康晴 (公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院リハビリテーション部)

キーワード:新人教育, 多職種連携, 専門職連携教育

【はじめに,目的】
当院リハビリテーション部では,新入職員の研修目的を,専門的な知識・技術の習得に加え,多職種との連携,社会人・専門職としての基礎力を身に付けることとしている。2014年度より,経済産業省が提唱している社会人基礎力を身に付けることを目的に,専門職連携教育の一環として,新入職員を対象としたフォローアップ研修を導入したので,現状と今後の課題について報告する。
【方法】
2014年4月に当院リハビリテーション部に入職した新入職員(PT4名,OT3名,ST4名)に対して,5月,7月にフォローアップ研修を行った。研修内容は,ポートフォリオシートを用いて,成功体験の発表を行い,その発表に対して,他の1名が良い点のみフィードバックを行うこととした。ポートフォリオシートの内容としては,「どのような患者で,どのような臨床場面でしたか。経過が分かるように具体的に書いてみましょう」,「自分自身,どのように良くできたり,関われたり,自信を持つことができたと思いましたか」,「その患者さんには,どのような影響や意味があると思いますか」,「その経験は今後の自分にどのような影響や意味があると思いますか」の4項目とした。時間配分については,成功体験の発表を1分30秒,発表者に対するポジティブフィードバックを1分とした。7月のフォローアップ研修会終了後に,アンケートを実施した(回収率100%)。アンケートの内容としては,①本日の研修において,何か得られるものがありましたか,②1回目のフォローアップ研修と比較して,感じ方に違いがありましたか,③1回目のフォローアップ研修後,行動や心境に変化はありましたか,④研修の興味や関心,満足度に対する感想の4項目とした。
【結果】
①の問いでは「他者の成功体験を聞くことで,自分の今後の臨床での参考になる部分もあると思った」,「ポートフォリオシートの内容をそのまま読むのではなく,わかり易く人に伝えるためには,自分の言葉に直して話すことが重要だと思った」,「今の研修で上手くいかないことが多く,落ち込んでいたので,同期の成功体験を聞いて,もう一度頑張ろうと奮起することができた」,②の問いでは,「今回は自分と患者さんの内容だけでなく,多職種の方やご家族も交えた成功体験を聞くことができて良かった」,「発表者や発表内容,それに対するフィードバックの質が上がっているように感じた」,「実際に自分が指導したらどうしていたとか,想像しながら聞いてみて,たくさんのやり方,その人らしさがいいなと思った」,③の問いでは,「患者さんの問題点を見がちだが,良いこと,できているところを視野に入れることができるようになった」,「指導者に報告や相談をする際に,わかり易く伝えようと意識するようになった」,「多職種の臨床に目を向けられるようになった」,④の問いでは,「同期のみんなの成功体験を聞き,今後の自分の目標や励みになった」,「ポジティブフィードバックを,上手く患者さんにもしていかなければならないので,良い練習機会になった」,「明日からの臨床も前向きに捉えて頑張れそうだ」等が挙がった。
【考察】
アンケート内の感想より,多職種間での成功体験の共有は,他の職種の仕事内容や姿勢,考え方を学ぶ機会になり,その成功体験を今後の自分の行動に活かそうとしていることがわかった。また,社会人基礎力は,前に踏み出す力(主体性,働きかける力,実行力),考え抜く力(課題発見力,計画力,創造力),チームで働く力(発信力,傾聴力,柔軟性,状況把握力,規律性,ストレスコントロール力)で構成されている。成功体験の発表を行い,他者の意見を聴くことで,働きかける力や課題発見力,発信力,傾聴力,状況把握力の向上に繋がっていると考える。また,ストレスコントロール力に関する学びも得られており,悩みを抱えることの多い新入職員にとって,ストレスコントロール力の向上は特に重要と考える。今回の報告では,評価尺度を用いての客観的な評価が行えていないことや,本研修で身につけた社会人基礎力が,具体的にどのような場面でどのように多職種との連携に活かされているかまでは調査できていないため,今後の課題としたい。
【理学療法学研究としての意義】
新入職員という成功体験が決して多くない環境において,多職種間で成功体験を発表し合うことで,些細な発見や経験をも大切にし,物事を前向きに捉え,様々な考え方や姿勢を学ぶ良い契機になっていると考える。今後も,多職種間での連携を深めるための,社会人基礎力の強化に繋げていきたい。