第50回日本理学療法学術大会

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分科学会 シンポジウム

日本糖尿病理学療法学会 分科学会 シンポジウム2

糖尿病運動療法の可能性―Scienceとしての進歩と療養指導における理学療法士の可能性―

Fri. Jun 5, 2015 1:50 PM - 3:40 PM 第4会場 (ホールB7(2))

座長:南條輝志男(日本糖尿病療養指導士認定機構), 石黒友康(健康科学大学 健康科学部理学療法学科)

[S-02-1] 科学としての運動療法の進歩

小川渉 (神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科)

運動療法は,食事療法と並んで2型糖尿病の最も基本的かつ重要な治療法である。また,運動療法は2型糖尿病の発症自体を抑制する効果も持つ。肥満は2型糖尿病の発症や悪化の重要な要因であり,運動療法はエネルギー消費の亢進を通じて,肥満の解消にも役立つ。しかし,2型糖尿病における運動療法は体重減少とは独立したメカニズムを介して,抗糖尿病作用を及ぼし血糖コントロールの改善をもたらすことも多くの臨床研究で明らかとなっている。身体運動はインスリン作用と独立した機序で骨格筋の糖取り込みを刺激し,血糖降下作用を発揮する。運動療法は骨格筋のインスリン感受性も増強させるが,これには運動による糖代謝関連遺伝子の発現増強作用が重要な機能を担うと考えられている。また,長期に亘るトレーニングは,筋肉量自体の増加や骨格筋の形質転換を通じて全身のインスリン感受性を増強することも知られており,このような骨格筋の形質転換に関わる分子機構も明らかになりつつある。
運動療法は2型糖尿病患者の血糖コントロールの改善だけでなく,糖尿病の重要な合併症の一つである大血管障害の発症予防にも効果がある。大血管障害の発症予防には,肥満や脂質異常,血圧に対する効果に加え,運動による血管内皮機能の改善作用が寄与する可能性も示唆されている。また,最近糖尿病患者では癌罹患リスクが増加することが明らかになり,癌と糖尿病を結ぶメカニズムにも注目が集まっている。身体運動の増加は大腸癌や乳癌など糖尿病でリスクが増加する癌の発症に抑制的に作用することも明らかとなっている。本講演ではこのような運動療法の抗糖尿病作用や合併症の予防作用についての臨床的成績とともに,そのメカニズムについての最近の治験について概説する。