第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本糖尿病理学療法学会 分科学会 シンポジウム2

糖尿病運動療法の可能性―Scienceとしての進歩と療養指導における理学療法士の可能性―

2015年6月5日(金) 13:50 〜 15:40 第4会場 (ホールB7(2))

座長:南條輝志男(日本糖尿病療養指導士認定機構), 石黒友康(健康科学大学 健康科学部理学療法学科)

[S-02-3] 糖尿病療養指導における理学療法士の役割と期待

渥美義仁 (日本糖尿病学会理事/永寿総合病院糖尿病臨床研究センター)

糖尿病患者は増加を続け,現在950万人を超えると推定されている。糖尿病の治療目標は,糖尿病腎症,網膜症,神経障害,心血管病変,足潰瘍などの合併症によるQOL低下と健康寿命をまっとうすることである。糖尿病腎症は透析導入の最大原疾患で約44%を占め,糖尿病網膜症は視覚喪失の2番目の原因疾患である。世界では糖尿病足病変により30秒に一本足が切断されている。このように糖尿病は健康障害の重大な原因であるので,国家的対策も取られているが成果が上がりにくい。その理由は,自覚症状に乏しいことと,薬物療法が進歩した現在も食事療法と運動療法が治療の基本だからである。生活習慣が治療の根幹であることから,患者自身が糖尿病の病態,合併症,治療法を知って,食事・運動療法の必要性を理解して実践することが必要である。幅広いアプローチが求められるため,1型にも2型に対しても様々な医療職によるチーム医療が行われてきた。これまで理学療法士は,糖尿病の運動療法の指導や支援と,脳血管障害,心血管疾患を発症したり透析となった糖尿病患者のリハビリを主に担当してきた。いずれも糖尿病の幅広い知識が求められるので,糖尿病療養指導士の認定を取得する理学療法士が増えている。今後は,高齢で複数の心血管病変を有し,サルコぺニアやフレイル状態となり,認知症も併せ持つ糖尿病患者が増えることから,これらの発症や進行予防を担うことが求められる。糖尿病患者の健康寿命を延ばし,できるだけ長く一人で身の回りのことができて尊厳を保って生活できるようにするために,理学療法士の役割は益々広がる。この役割を担うには糖尿病の療養指導全般,食事療法,薬物療法,低血糖の対処などの知識と,糖尿病患者の動機づけも習得する必要がある。