第50回日本理学療法学術大会

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分科学会 シンポジウム

日本運動器理学療法学会 分科学会 シンポジウム7

運動器理学療法のパラダイムシフト―新たなる可能性への挑戦―

Sat. Jun 6, 2015 3:00 PM - 4:50 PM 第1会場 (ホールA)

座長:常盤直孝(川越整形外科 リハビリ室), 金村尚彦(埼玉県立大学 保健医療福祉学部理学療法学科)

[S-07-1] 運動器理学療法における科学のこれまでとこれから

対馬栄輝 (弘前大学大学院保健学研究科)

科学とはおよそ,科学的方法に基づいて得られた知識あるいは学問と解釈できる。科学的方法とは,ある対象について一定の研究方法に基づいた観察・実験で得られた知見から,体系的に構築された一般法則を見出し,一定の基準を満たした状態で理論的裏付けを行い,その正しさを立証する過程をさす。ただし,これは,その時代での暫定的な概念的定義である。
今日までの理学療法は,全てではないにしろ,とうてい科学的とは考えられないわけではあるまい。そもそも科学的とは証拠への依存,仮説と理論の使用,用いられる論理において共通している(AAAS,1989)。つまり,専門家・研究者どうしに容認される測定・評価,それを裏付ける理論は時間経過と共に変遷するからである。天動説を基にして誤りを判定する歴史も存在していた。
いま,理学療法の科学的裏付けを意識するあまり,概念的定義から操作的定義を目指し,客観性とか定量性を追求することこそ高尚なものとして意識されている感がある。理学療法の科学的検証として,厳密に環境が統制された条件下で行われる実験研究に基盤を置く立場は大切であるが,理学療法で対象とするものとは異なる場合は多い。逆に理論に裏付けさえされていれば科学的と考える誤解もある。全てを否定するつもりはなく,理学療法の学問確立のために方向性を見失うべきではないということである。例えば根拠に基づく理学療法(EBPT)の考え方は,あくまで“科学的根拠”では無いことにも注意すべきである。本質は何かを見極める知識と知恵が要されているのである。
前置きは長くなったが重要な事項である。運動器理学療法に特化して,いままでの問題とは何か?これから必要とされているものは何かを提案し,共に考える場を提供したい。