第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本運動器理学療法学会 分科学会 シンポジウム7

運動器理学療法のパラダイムシフト―新たなる可能性への挑戦―

2015年6月6日(土) 15:00 〜 16:50 第1会場 (ホールA)

座長:常盤直孝(川越整形外科 リハビリ室), 金村尚彦(埼玉県立大学 保健医療福祉学部理学療法学科)

[S-07-2] 運動器理学療法のパラダイムシフト

~新たなる可能性への挑戦~

山口光國 (有限会社セラ・ラボ)

運動器理学療法の歴史を,簡単に表すとしたら,主観から客観へ,経験的対応から科学的対応へと言えるのではないでしょうか。
しかし,運動器理学療法の役割は変わることはありません。人は生まれたら,必ず死を迎えます。この唯一とも言える真理からすると,人は永遠に保持される機能は存在しません。
それは誰もが理解していることであり,最終的には,苦しみから逃れたいと言うことにつながることが多いのではないでしょうか。そのためにも,望む機能が再獲得できるのであれば,改善が望ましく,しかし,改善が望めないのであれば維持が好ましく,失われてしまったものについては受容と代用が必要となります。
運動器理学療法は,まずこの判断が重要となり,また時に,失われてしまった機能と維持が望ましい機能と,改善が見込まれる機能が混在することもあります。
客観的に,科学的に判断することは,非常に重要ですが,判断は,単に確率論を押しつけてしまうものではありません。確率論の多くの場合は,正しさについては言及できないため,そのまま対応へと反映させて良いというものではありません。
ましてや,基準となる数値は,あくまでも参考であり,その値だけで良し悪しを決定したり,すべき対応が決定されるとは限りません。
これまで私達は,的確な評価を明らかにし,理にかなった技術を導き出してきました。これからも,この素晴らしい流れは続けられるべきであり期待されるものであると考えます。
しかしながら最終的には,確率論から何をさせるのかではなく,今の状態を踏まえ自身の役割を明確にし,症例の本来あるべき姿へ誘うために必要なことを見出す,総合的判断力が重要となるのではないでしょうか。知識,技術ももちろん大切ですが,今回は,これからの運動器理学療法をより発展させるためにも,この総合的判断力に焦点をあて,皆さんと考えてみたいと思います。