第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本運動器理学療法学会 分科学会 シンポジウム7

運動器理学療法のパラダイムシフト―新たなる可能性への挑戦―

2015年6月6日(土) 15:00 〜 16:50 第1会場 (ホールA)

座長:常盤直孝(川越整形外科 リハビリ室), 金村尚彦(埼玉県立大学 保健医療福祉学部理学療法学科)

[S-07-3] 運動学・運動力学的視点から捉えた理学療法の再考

山田英司 (回生病院関節外科センター附属理学療法部)

理学療法はサイエンス(科学)とアート(定性部分)の融合であり,質の高い理学療法を提供するためには,両者のバランスが重要である。質が保証された理学療法を行うために,理学療法士は最良のエビデンスを用い,治療にあたる必要がある。例えば,国内に約2,500万人と推計される変形性膝関節症に対する治療ガイドラインもいくつか報告されているが,変形性膝関節症という大きなカテゴリーで捉えたガイドラインでは,様々な病態や臨床症状を呈する個々の患者に対応することが困難である場合が多い。すなわち,変形性膝関節症という1つの疾患名のカテゴリーから出されたエビデンスのみでは,臨床における個別性に対応しにくいということである。今後,変形性膝関節症を病態や臨床症状,あるいは運動学・運動力学的に特徴づけたサブカテゴリーに分類し,エビデンスを構築していくことが重要である。運動器疾患において,理学療法士が適切な理学療法を提供するためには,単に疾患名に依存した理学療法ではなく,いかに機能障害を評価し,その障害を治療対象とする理学療法に発想を転換することが必要である。我々はこれまでの教育の中で,疾患名から評価項目を抽出し,治療を展開すること,すなわち疾患名ありきでの理学療法学を学んできた。しかし,このような思考過程のみでは,理学療法士が最も得意とする対象者の訴えや症状から病態を推測し,仮説に基づき適切な検査法を選択して,対象者に最も適した介入方法を決定していく臨床推論の過程を活かすことができにくい。本シンポジウムでは,変形性膝関節症を例として,理学療法をどうパラダイムシフトするかを運動学・運動力学的データを用いて述べる。