第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本神経理学療法学会 分科学会 シンポジウム8

脳卒中後遺症者の歩行再建―これまでのあゆみと可能性への挑戦―

2015年6月6日(土) 15:00 〜 16:50 第2会場 (ホールC)

座長:大槻利夫(上伊那生協病院)

[S-08-2] 脳血管障害患者の歩行再獲得と高次脳機能障害の関わり

中村学 (竹の塚脳神経リハビリテーション病院)

健康日本21によれば,脳血管障害は要介護者における介護が必要になった要因の第一位とされ,活動性低下や転倒の危険性が増加する原因である。さらに死亡率は低下しているものの,それに比例して疾病構造が複雑化し発症後のリハビリテーションで難渋するケースも増加してきている。そんな中,急性期・回復期病院での脳血管障害後の歩行獲得は重要な課題とされており,より早期から効果的なリハビリテーションが必要である。
脳卒中ガイドライン(2009)では,歩行などの下肢練習量の増大が歩行能力改善のために推奨されており,これまでは当院でも早期から長下肢装具を用いた立位,歩行練習を行い実用的な歩行獲得を目標に装具療法を実施してきた。装具療法を利用することで中枢パターン発生器(CPG)を活性化し,トレッドミルなどがなくとも十分な歩行練習効果を発揮できていると感じる一方で,脳血管障害後の機能障害は高次脳機能障害などがあり歩行練習効果を得にくい場合もある。日常生活においては歩行能力に加え,会話しながら歩く,障害物を避けて歩くなどの二重課題処理能力も求められ,歩行獲得における高次脳機能障害の影響は少なからずあるといえる。今回は歩行能力と注意機能などの関連をご紹介する。
また,近年脳血管障害患者の垂直認知能力について,多数の報告があり,特に半側空間無視やPusher症候群を合併している症例では垂直認知の偏倚と姿勢制御能力に関連がある。我々は垂直認知能力を簡易に測定できる垂直認知測定装置を用いて,主観的視覚垂直や主観的身体垂直を測定し,かつ治療アプローチの一助として垂直認知偏倚へのアプローチが可能か検討している。
今回は高次脳機能障害という広大な分野から実用歩行に必要な機能として注意機能や垂直認知能力をクローズアップし,歩行獲得との関わりとその可能性について言及していきたい。