第50回日本理学療法学術大会

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分科学会 シンポジウム

日本予防理学療法学会 分科学会 シンポジウム9

これからの介護予防における理学療法士の果たすべき役割

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 7:20 PM 第1会場 (ホールA)

座長:大渕修一(東京都老人総合研究所)

[S-09-3] ロコモティブシンドロームを中心とした運動器の健康

新井智之 (埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科)

高齢化,長寿化が進行している我が国においては,健康寿命の延伸に向けた取り組みが重要となっている。平成25年の国民生活基礎調査によれば,介護が必要となった主な原因として,「骨折・転倒」が11.8%,「関節疾患」が10.9%となっており,運動器に関わる原因が全体の2割以上を占めている。さらに変形性関節症,腰部脊柱管狭窄症,骨粗鬆症といった運動器疾患をかかえる人が急増しており,全国で4700万人に及ぶと推定されている。このような背景から日本整形外科学会は2007年に運動器の障害のために移動能力の低下をきたした状態として「ロコモティブシンドローム:運動器症候群(ロコモ)」という概念を提唱した。
運動器の変化は個々の症状が独立して生じるのではなく,膝・腰などの関節,骨,筋が関連して複合的に機能低下をきたすことが特徴的である。さらに運動器の変化は普段の生活の場面で認識しづらいという特徴もあり,「歩く際に膝に痛みが出てきた」「自宅で転んで骨折をした」「たまたま検査したら骨密度が低かった」など気づいた時には,運動器の障害が進行していることが多い。そのためできるだけ早期に運動器の衰えを確認し,自分で予防するような取り組みが重要となる。健康日本21(第二次)ではロコモの普及啓発とその予防が目標に掲げられており,ロコモへの関心は今後より一層高まることが予想される。
我々理学療法士は以前から医療機関でのリハビリテーションや,地域の介護予防活動を通して運動器疾患に関わっており,疾患やその予防に関する知識や技術を持っている職種である。そのため今後運動器への関心が高まる中で,理学療法士はロコモ予防の中心的な役割を担っていかなければいけないと考える。
以上のことを踏まえて,本シンポジウムではロコモを中心とした運動器の予防に関して,我々が行っている研究活動などの取り組みも含めて紹介する。