第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本地域理学療法学会 分科学会 シンポジウム10

超高齢社会下での社会システムにおいて理学療法士に求められるものは何か―医療現場から在宅や地域での活動を通して今何を考え実践すべきか―

2015年6月6日(土) 17:30 〜 19:20 第2会場 (ホールC)

座長:隆島研吾(神奈川県立保健福祉大学 理学療法学専攻)

[S-10-1] 超高齢社会における医療介護政策の展望と理学療法士への期待

辻哲夫 (東京大学高齢社会総合研究機構)

世界に例のない超高齢化が日本で進行している。
当面,急速に進む後期高齢者の急増への対応が試金石である。そのあるべき方向は,生活習慣病の予防と虚弱化の予防をまず進めるとともに,長生きの結果として虚弱な状態を経て死に至るということが普通になる中で,生きていてよかったと安心して地域の中で生き切れる社会システムを作ることである。
このための医療介護政策は,全体としてどう動いているのかをまず概観したい。
健康寿命の延伸という意味では,「食べる」ということと合わせて「身体活動」がキイワードとなる。また,虚弱の予防に関しては,今後は,「社会参加」ということが重要となるので,これら全体の総合的な取り組みが必要となる。
今後の医療の在り方として,「治す医療」から「治し,支える医療」に大きく転換し,医療・介護の連携が求められ,政策は,地域における生活を支える在宅医療を含む多職種連携の確立に向けて動き始めている。もとより,リハビリテーションの分野は,生活を支えるという視点から見てきわめて重要である。地域包括ケアシステムの展開は,各専門職のより踏み込んだ連携を必要とし,そのことを通してそれぞれの真の専門性が求められていく。理学療法士もその専門性を確認しつつ,様々な関連分野との学際的な研究や連携を推進することが不可欠である。
東京大学高齢社会総合研究機構では,虚弱化の構造とその早期の予防に関する研究を行うとともに,民間活力を活用した健康づくり・虚弱予防の取り組みを千葉県柏市で展開している。また,高齢化に対応するまちづくり(柏プロジェクト)の一環として,医師を始めとする多職種のモデル的な連携による地域包括ケアシステムの開発に取り組んでいる。
これらの取り組みも交えながら,超高齢社会における医療介護政策の展望と理学療法士への期待について述べたい。