第50回日本理学療法学術大会

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分科学会 シンポジウム

日本呼吸理学療法学会 分科学会 シンポジウム11

新たなる可能性への挑戦「急性期呼吸理学療法」

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 7:20 PM 第3会場 (ホールB7(1))

座長:神津玲(長崎大学病院 リハビリテーション部), 関川清一(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院)

[S-11-1] 当院における体外式膜型人工肺装着患者への理学療法介入の現状

皿田和宏, 對東俊介, 西川裕一, 河江敏広, 佐々木康介 (広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門)

重症呼吸不全に対する治療法の1つとして,体外式膜型人工肺(veno-venous Extracorporeal membrane oxygenation:V-V ECMO)が注目されている。対象は,ARDS(acute respiratory distress syndrome),肺移植までのブリッジ,重症肺外傷,重症肺胞出血などであり,死亡率80%以上の予想があれば適応となる。人工呼吸器設定を最小限にして“lung rest(肺を休ませる)”させながら,ECMOによって酸素化および換気補助を行い,その間に自己肺の機能回復を待つことが治療の主眼となる。
V-V ECMOによる治療は,2009年のARDS症例に対する有効性を示す“CESAR trial”発表後から注目されるようになり,ELSO(extracorporeal life support organization)からガイドラインが発表され,ECMO管理システムが発展してきている。ガイドライン(日本語版)では,「病態を考慮した上で可能な限り可動性のある正常な体位を保つべき」としており,病態によっては早期離床を検討できる。また「背側無気肺の発生は避けるべき」とされ腹臥位管理にも言及しており,我々理学療法士が呼吸不全患者に対して通常行う早期離床や体位呼吸療法について可能な限り実施すべきである。
しかし,症例ごとに担当医師と協議して介入時期や内容を検討することが必要である。咳嗽反射を過度に誘発し,治療主眼の“lung rest”の妨げになる場合には体位呼吸療法は休止すべきである。またARDS患者は,病態や病因が多岐に渡り個別性が高いため毎日の判断が必要であることや,出血をはじめ多くの合併症併発の可能性が高いことを十分考慮する必要がある。そのためにはECMOに関する知識の習得や,多職種連携体制の構築が必要である。
2005年から2014年8月までの当院におけるV-V ECMO適応症例は27例であった。本邦ではV-V ECMO導入中から理学療法介入した16例(59%)について考察を交えて報告するとともに,今後のV-V ECMO症例に対する呼吸理学療法の可能性について言及したい。