第50回日本理学療法学術大会

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分科学会 シンポジウム

日本呼吸理学療法学会 分科学会 シンポジウム11

新たなる可能性への挑戦「急性期呼吸理学療法」

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 7:20 PM 第3会場 (ホールB7(1))

座長:神津玲(長崎大学病院 リハビリテーション部), 関川清一(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院)

[S-11-3] 重症熱傷患者に対する理学療法

木村雅彦 (北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

集中治療領域における理学療法介入は対象の特性ならびに治療に対する反応性によっても大きく異なるが,その本質的な命題はひとえに合併症の予防ならびに身体機能の早期再獲得を図り,発生する障害を予測し最小化することである。
一般に外傷は急性発症しその一部には後遺障害を負う疾病として捉えられる。そのため早期から全身管理の一部を支援しつつ,また離床に際しての合併症にも充分な警戒を行いながら,のみならず将来の障害を最小化するための取り組みを積極的に行う必要がある。なかでも広範囲熱傷は究極の外傷あるいは究極の侵襲と称される病態であり,体表面積の70%を超える場合には呼吸循環動態の把握および生体制御に立脚した全身管理と損傷組織の再置換を図る移植術ならびに栄養療法や感染症対策をはじめとする支持療法に広く数多く開発されてきた先端医療技術を駆使するにもかかわらず,残念ながらその生存率は極めて低く,救命に成功した後にも重篤な障害を残し機能予後の獲得には更に難渋する。しかしこれは重症熱傷患者が理学療法士にとって挑戦すべき対象であることの理由にほかならない。特に近年増加する高齢熱傷患者においてはその救命と障害の最小化は決して容易なことではないが,この困難な状況に適切な介入を行うことで,より良い機能予後を獲得すべく挑戦することが我々の責務である。
そして,広範囲熱傷と同様に最先端の技術と集中治療が必要な放射線被曝(放射線熱傷)についても,被爆国でありかつ深刻な放射線災害を経験した我が国においては特にその関心は高い。高線量被爆者に対する理学療法介入の報告は極めて少なく,その障害予測には困難を極めるものの,免疫能と再生能とを失った患者の集中治療においてもその病態安定に貢献し,ダメージコントロールを行いながら積極的に支援する必要がある。困難な対象において多職種が相互理解の上に連携してこそ初めて可能となる挑戦である。