第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本基礎理学療法学会 分科学会 シンポジウム12

基礎理学療法の新たなる可能性―若手研究者(U39)による最先端研究紹介―

2015年6月6日(土) 17:30 〜 19:20 第4会場 (ホールB7(2))

座長:山崎俊明(金沢大学 医薬保健研究域保健学系), 金子文成(札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科)

[S-12-2] ストレッチングが筋の柔軟性に及ぼす影響について

中村雅俊 (同志社大学スポーツ健康科学部)

我々,理学療法士は関節可動域(ROM)や筋の柔軟性の維持・改善のためにスタティックストレッチング(SS)を行っている。臨床現場では,SS介入によりROMが増加することを多く経験しており,実際に,数多くの先行研究によりSS介入により即時的および,継続的なSS介入におけるROMが増加することが報告され,統一された見解が得られている。これらの報告の多くは,このROMの増加には筋の柔軟性が増加することが関与していると考えられていた。しかし近年では,このROM測定はROMを測定している検者の押す力が一定ではないという問題や,測定されている被験者の心理状態や痛みに対する耐性などが影響するために,正確に筋の柔軟性を反映していないことが指摘されている。そこで,ROM測定に代わる筋の柔軟性の評価方法として,関節を他動的に動かしてくるときに生じる抵抗である受動的トルクを測定する方法や,受動的トルクとその時の関節角度との関係をトルク―角度曲線として描き,その傾きをスティフネスとして算出する方法が推奨されている。また,超音波画像診断装置を用いることで,より正確に筋の柔軟性の変化を検討することが可能になっている。具体的には,他動的に筋を伸長した時の筋と腱の移行部である筋腱移行部の移動量を測定する方法や,超音波診断装置の機能の1つであるせん断波エラストグラフィー機能を用いることで筋の弾性率を測定する方法も考案されており,SS介入の効果の検討に用いられている。
臨床で行うことが多いSS介入について,受動的トルクやスティフネス,筋腱移行部の移動量,筋の弾性率を指標に検討した報告は,ROMを指標とした先行研究と比較して数少なく,未だに統一された見解が得られていないのが現状である。そこで本講演では,これらの指標を用いたSSを中心としたストレッチングが筋の柔軟性に及ぼす影響について我々の研究結果を紹介する予定である。