第50回日本理学療法学術大会

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教育講演

教育講演5

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:40 AM 第4会場 (ホールB7(2))

司会:浅野直也(国立長寿医療研究センター 機能回復診療部)

[TK-05-1] 災害医療と理学療法士

小井土雄一1, 近藤久禎2, 小早川義貴3, 浅野直也4 (1.災害医療センター臨床研究部・救命救急センター, 2.国立病院機構災害医療センター臨床研究部, 3.国立病院機構災害医療センター福島復興支援室, 4.国立長寿医療研究センター機能回復診療部)

本邦の災害医療体制は阪神淡路大震災を契機に整備された。具体的には災害拠点病院の整備,災害派遣医療チーム(DMAT)の発足,広域災害救急医療情報システム(EMIS)の開発,広域医療搬送計画などの策定である。これらは主として災害急性期に関しての有効なソリューションであり東日本大震(3.11)災急性期には機能したが,復旧・復興という点で効力は乏しかった。3.11では,亜急性期以降如何にシームレスに医療支援を行うか,また中・長期的に如何に保健医療を復旧・復興させるかが大きな教訓となった。
DMAT等医療チームが被災地に入った場合,まずけがをした人やすでに入院をしている傷病者の対応が優先される。一方,被災地にはけがをしていない多くの住民がいて,避難所等で過ごしている。彼らの中から将来の生活不活発病が生じ,震災関連死が生じる可能性がある。よって,急性期の医療チームは,けがをした人などの対応をしながら,避難所等に避難した住民も配慮しなくてはいけない。もし自分たちの手がまわらなければ,関係団体と連携してその対応をする必要がある。個人が発症・受傷したその日から社会復帰の第1歩が始まるように,復旧・復興の第1歩が発災当日から始まる。
「理学療法士及び作業療法士法」では,理学療法を「身体に障害のある者に対し,主としてその基本的動作能力の回復を図るため,治療体操その他の運動を行なわせ,及び電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義している。実際の理学療法士の役割はより広範で,患者が自立した日常生活を遅れるよう,環境整備も行なう。被災者の自立こそが生活不活発病の本質であり,復興reconstructionとリハビリテーションrehabilitationの思想は本質的に同じであるように思える。3.11以降,震災関連死を防ぐための理学療法士の役割がクローズアップされている。本講演では災害医療における理学療法の役割について考えたい。