第50回日本理学療法学術大会

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大会長基調講演

大会長基調講演

Sat. Jun 6, 2015 9:25 AM - 10:05 AM 第1会場 (ホールA)

司会:星文彦(埼玉県立大学 保健医療福祉学部理学療法学科)

[TL-01-1] 理学療法50年のあゆみと展望―新たなる可能性への挑戦―

内山靖 (名古屋大学大学院医学系研究科)

50年の間に科学技術は著しく進歩し,疾病構造の変化,生活習慣の変容,少子高齢化,国際化,情報化など,社会の変化とともに理学療法のニーズは拡大と変遷を遂げてきた。国民の期待は,健康寿命の延伸を共通の目標として,生活の場に応じた連続した理学療法を,明確な根拠をもって安全かつ効果的に実施することが挙げられる。そのためには,“予防”と“参加”を理学療法の文脈で推進することが求められる。
近年では,運動器,神経,呼吸循環代謝など,診療科に対応した高度な病態の理解に基づく専門医との連携が不可欠である。ただし,理学療法は,人間を総体としてとらえ,参加や活動に資する基本的動作能力の回復を中核とする専門職である。基本的動作は,運動の発現に関係する筋―骨・関節,制御に関係する神経,運動の維持に必要な酸素供給と栄養,動くことへの意欲や情動などを切り離して考えることはできない。動作の観察,さまざまな検査を統合した治療指向的な解釈,主な課題―目標―治療プログラムの相互関係を結びつけるなど,症候障害学的な臨床推論(クリニカルリーズニング)能力は理学療法士にとってのコア・コンピテンスとなる。
理学療法の学問体系は,分子生物学から倫理を包含した生命科学から,公衆衛生学,工学,教育学や福祉・医療経済学を含めた街づくりに関するポピュレーションアプローチまでを含む学際的な要素で形成される。また,学術活動には,臨床での気づきを科学的な手段で視覚・標準化し,さらなる臨床の可能性と質を向上する感性や個別性を認証する使命がある。
保健に関わる専門職は,臨床,研究,教育,管理運営・政策,国際・地域貢献の5つを適切に配分し統合する必要がある。これには,大学・大学院での高度な教育研究や卒後研修制度など,良質な機会を提供する組織・制度的な取り組みも求められる。
本大会を,これまで先達が脈々と紡いでこられた実績と思いを振り返り,新たなる可能性へ挑戦していく機会としたい。