第50回日本理学療法学術大会

講演情報

合同シンポジウム

日本整形外科学会 合同シンポジウム1

超高齢社会における健康長寿の実現と運動器対策

2015年6月5日(金) 13:50 〜 15:40 第1会場 (ホールA)

座長:村永信吾(亀田総合病院 リハビリテーション事業管理部), 中村耕三(日本整形外科学会前理事長/国立障害者リハビリテーションセンター)

[TS-03-1] 超高齢社会における運動器の障害の理由と健康のための対策

中村耕三 (日本整形外科学会前理事長/国立障害者リハビリテーションセンター)

動けることは動物の基本機能で、人は直立二足歩行を基本的な移動様式とする。直立二足歩行は、立位姿勢のバランスを意図的にいったん前方に崩し、接地していな遊脚を前方に踏み出すことでバランスを回復させる。エネルギー効率は良いが、精緻なコントロールを必要とし、脊椎や下肢関節への負担が大きい。必要なコントロールが精緻である分、運動器のどの部分の障害も、スピーディな歩行は妨げられ、躓いたり転倒したりする。
運動器は変性疾患が多く、慢性に経過し、顕在化するのは50歳以降である。平均寿命が80歳を超えた現在、多くの人が人勢の後半に移動機能の障害を経験することとなる。「運動器を長持ちさせ、生涯にわたり立ち、歩き続けるための工夫・対策」が必要となった。
運動器は運動を担う器官であることから、加齢だけでなく、不適切な使用が障害のリスクである。
1)運動の不足による障害:骨粗鬆症とサルコペニア
骨は全体重の約20%、筋肉は30-40%を占める重い組織で、また、活発に形成と吸収を繰り返している。重い身体は移動でのエネルギー消費が高くなることから、十分に使用されず力学的負荷量が不足すると、その骨や筋肉の量は減少する。
現代社会は、自動車など移動手段の発達により、人の運動や自力による移動の機会は減少した。一般に運動が勧められる理由である。
2)運動の過剰による障害:椎間板・関節軟骨変性
足腰に負担の大きいようなスポーツ経験や職業的繰り返し作業などは、力学的負荷量の過剰により、椎間板や関節軟骨変性のリスクとなる。理由として、①直立2足歩行では下肢関節軟骨や脊椎椎間板には負担がかかりやすいこと、②関節軟骨や椎間板の組織としての特性がある。
運動器の障害はその不適切な使用が障害のリスクである分、対策が可能である。人々が運動器の健康の重要性を知り、測り、具体的な対策をとれるよう、専門職への期待は大きい。