[TS-05-3] 多職種協働の実践を目指して―医師から見た理学療法士―
10年後には75歳以上の人口の1/4を占めるような超高齢社会が到来するといわれています。そのため今までより地域に密着した支援形態が求められることになります。そしてこれらを実効あるものにするため連携や協働の重要性が指摘されています。当然職場や地域の現場だけではなく,職域団体や将来医療人を養成するような教育機関でも例外ではありません。今回このシンポジウムで発言の機会をいただいたのもこの大きな流れの中の一つの表れと考えています。医療の現場が病院・医院から一歩踏み出してきています。患者・利用者のニーズに応えるにはチームで個々の専門性,たとえば医師,理学療法士としての特性を十分に生かし,役割を分担してゆく必要があります。病院の中で医療がほぼ完了している場合には部門内での情報共有レベルで対応できていましたが,問題点が残った状態で自宅などでよりよい生活を送るためには家族,隣人など地域住民,行政,医療・介護職,福祉の専門家など医療だけでなく生活そのものも支援できる地域での包括的なケアが求められるようになってきました。このシステムの基盤を構築するためには情報を共有し,お互いの専門性をよく認識する必要があります。医師に対する認知度調査“医師の「職種に対する認知度・被認知度」の2次元マッピングによる分析”(第47回日本医学教育学会 東京大学,春田淳志ほか)では“医師にとって看護師や薬剤師は認知度・被認知度が高く,心理士や精神福祉士に関しては認知度・被認知度が低かった。理学療法士はその中間に位置する”とされていました。多職種協働のためには,“職種間の壁”を低くする必要があります。そのためには早期から協働の場に身を置くような教育環境を作り,患者・利用者に関わる医師・理学療法士などがまずは顔が見える関係を構築する努力が必要になると思われます。