第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム4

これからの理学療法研究―世界への発信―

2015年6月6日(土) 10:15 〜 12:05 第2会場 (ホールC)

座長:黒木裕士(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻理学療法学講座)

[TS-06-4] 循環器理学療法研究の立場から

神谷健太郎 (北里大学病院リハビリテーション部)

人口の高齢化に伴い、先進国において心血管疾患患者が増加している。世界187カ国で行われた疾病負担に関する国際共同研究によると、1990年に第4位であった虚血性心疾患は、2010年には第1位となっている(Lancet, 2012)。循環器疾患は加齢に伴い罹患率が指数関数的に上昇する疾病であり、理学療法士が遭遇するcommon diseaseの代表的疾患となっている。循環器疾患は、十分なリスク管理のもとで効果的な理学療法介入を行えば、機能予後や生命予後をも左右する成果が期待できる。しかし、日本理学療法士協会が公表している認定理学療法士数に目を向けてみると、循環分野は他分野に大きく遅れをとっており、更なる臨床、研究、教育の発展が期待される。
循環器分野の国際学会で最も影響力のある学会は米国心臓病学会(AHA)とヨーロッパ心臓病学会(ESC)で、近年の演題採択率はAHA 45%、ESC 40%前後である。国際学術誌のトップジャーナルはJournal of the American College of Cardiology, Circulation, European Heart Journalがあげられる。これらの雑誌や5大医学雑誌に掲載された論文は、その後のガイドラインに反映され、世界の循環器臨床、研究、教育に大きな影響を与える。本分野で研究し、その成果を世界に発信していく上では、これらのコアジャーナルやガイドラインにおいて何が分かっていて、何が未解決であるのかを十分調査した上で行わなければ、国際誌へのアクセプトは難しくなる。逆に、そこが明確であれば、臨床研究は特別な研究機関でなくてもコストをかけずに実施可能である。日常臨床の中で信頼性の高い評価指標を用いて介入を評価し、予後を追跡することは、臨床能力を改善させるよい機会となる。
本シンポジウムにおいては、最近の循環器領域の研究や自らの経験をふまえ、これからの理学療法研究についてお話したい。本分野に精力的に取り組もうとする若手研究者や臨床家の皆様の参考になれば幸いである。