第50回日本理学療法学術大会

講演情報

合同シンポジウム

日本生理学会 合同シンポジウム4

生理学と理学療法の接点

2015年6月6日(土) 10:15 〜 12:05 第4会場 (ホールB7(2))

座長:浅賀忠義(北海道大学大学院 保健科学研究院機能回復学分野)

[TS-08-1] 自律機能並びに情動関連神経伝達物質放出におよぼす体性感覚刺激の影響

黒澤美枝子1,2, 下重里江2, 徳永亮太2 (1.国際医療福祉大学基礎医学研究センター, 2.国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科理学療法学分野)

理学療法の効果は,運動機能改善に主眼が置かれるが,理学療法により自律(内臓)機能も変化する。本講演では体性感覚刺激が自律機能におよぼす影響についての基礎研究を紹介する。
自律機能が内臓からの求心性情報によって反射性に調節されることはよく知られているが(内臓―内臓反射),皮膚や骨格筋・関節などからの体性感覚情報によっても自律機能は反射性に調節される(体性―自律反射)。また,体性感覚刺激によって不安,恐怖,快感など各種の情動が起こると,それらの情動によって自律機能は変化する。すなわち,理学療法の臨床において各種体性感覚刺激を用いると,体性―自律反射を介して自律機能が変化するが,情動によってその反射が修飾されると考えられる。
本講演では,体性―自律反射の例として,骨格筋(1側の前脛骨筋)刺激時の肝臓からのグルコース放出増加反応を紹介する。運動時には骨格筋の収縮が体性感覚神経を刺激し,反射性に動脈圧を高めることにより,収縮筋の血流増加が起こることが知られている。本研究は運動時のグルコース供給にも骨格筋収縮による反射機構が関わることを示したものである。一方,I型糖尿病モデル動物では同骨格筋刺激によって血糖増加は見られないものの,骨格筋刺激後インスリン感受性が増加する。全身運動時のインスリン感受性亢進は,骨格筋収縮に伴う骨格筋細胞内のシグナル伝達機構の変化によると考えられているが,本研究ではそれらの機構に加え,体性感覚神経を介するインスリン感受性亢進の機構も存在することを示した。
近年我々は,情動発生に関わる神経伝達物質(快情動と関わる側坐核のドーパミン,不安恐怖と関わる扁桃体中心核のセロトニン)の放出におよぼす体性感覚刺激の影響を検討しているので,その結果も一部紹介したい。これらの伝達物質の放出変化は情動変化を起こすと共に自律機能の調節に関わると考えられる。