[TS-08-2] 骨格筋萎縮に対する運動と栄養摂取を併用した理学療法の戦略と生理学との接点
骨格筋の廃用性萎縮は様々な疾病に生じる得る二次障害である。理学療法において,廃用性筋萎縮の予防や回復促進は主要な課題の一つである。また,廃用性筋萎縮に対する筋力増強運動は術後の炎症・疼痛,全身状態を鑑みながら実施する必要がある。一方,過度な運動負荷量や栄養状態によっては筋力増強運動を実施しても筋肥大や筋持久力の改善には至らないことがある。この要因として,運動負荷による過剰な活性酸素種(ROS)産生,血中のアミノ酸量に依存した筋タンパク質の合成・分解作用やエネルギー代謝等が関与する。例えば,萎縮筋に対する運動は軽度な負荷であっても,過剰なROS産生を促し,筋組織内の毛細血管網の後退やミトコンドリア機能障害を惹起させ,筋持久力改善の弊害となる。また,タンパク質摂取が少ない状態での運動は,アミノ酸プールである骨格筋からタンパク質が分解され,ATP産生に使用されることから筋萎縮を助長することになる。そこで,運動負荷を実施する際に抗酸化栄養補助食品やアミノ酸摂取等の栄養摂取を組み合わせることで筋力増強運動の効果的な実施法について検証を行った。運動負荷と抗酸化栄養補助食品摂取による研究から,筋萎縮予防のために実施した荷重負荷は過剰ROSを産生し,筋毛細血管網の後退やミトコンドリア代謝に関与する酸化的リン酸化酵素の減少を惹起させるが,抗酸化栄養補助食品を摂取することで筋萎縮と筋毛細血管網の後退等を同時に予防できることが明らかにした。また,アミノ酸摂取に関する研究では,安静時のアミノ酸摂取は筋毛細血管網の後退やミトコンドリア代謝障害を予防することや核酸含有アミノ酸摂取は筋萎縮からの回復を促進させる成果を得ている。こられの生理学的実験手法を用いた実験成果や最近の知見について紹介すると共に現在実施している栄養摂取による臨床試験の結果等についても言及する。