第50回日本理学療法学術大会

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合同シンポジウム

日本生理学会 合同シンポジウム4

生理学と理学療法の接点

Sat. Jun 6, 2015 10:15 AM - 12:05 PM 第4会場 (ホールB7(2))

座長:浅賀忠義(北海道大学大学院 保健科学研究院機能回復学分野)

[TS-08-3] 痛みを生み出す脳機構

加藤総夫1,2, 杉山弥恵1,2,3, 高橋由香里1,2 (1.東京慈恵会医科大学・神経科学研究部, 2.東京慈恵会医科大学・痛み脳科学センター, 3.日本学術振興会・特別研究員)

臨床におけるもっとも主要な患者の訴えは「痛み」である。痛みは,組織の傷害や炎症など,自分の身体に関する「有害性状況」を個体に「警告」する上で重要な機能であり,進化上きわめて古い時期に獲得され,個体の生存可能性を増加させるうえで貢献してきたものと思われる。このような痛みは「機能的」であり,有益なものである。一方,多くの先進諸国において,国民の20%近い人々がなんらかの慢性的な痛みで苦しんでいる。慢性痛は「通常の治癒期間を過ぎて訴えられる生物学的な意味のない痛み」と定義され,有害な状況が生じていないにもかかわらず,その「警告」としての負の情動が強く生じる状態であり,その「苦しみ」が患者を苦しめ続ける。
最新の神経科学の成果から,このような慢性痛は脳内の情動と疼痛閾値制御に関与する神経機構の可塑的な変化を背景として成立する可能性が示されてきた。特に,前帯状回,島皮質,そして扁桃体が慢性痛の成立とその情動障害に強くかかわることが明らかにされている。これらの脳構造は,痛みと情動の連関に関与するのみならず,下行性疼痛制御系を介して侵害受容そのものを修飾している可能性が示されてきた。慢性痛の成立に伴ってこれらの領域,特に扁桃体が示す可塑的変化について我々の慢性痛モデル動物のデータを中心に紹介する。