第50回日本理学療法学術大会

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合同シンポジウム

日本骨粗鬆症学会 合同シンポジウム6

超高齢社会における骨折予防の重要性と理学療法士の役割

Sat. Jun 6, 2015 3:00 PM - 4:50 PM 第3会場 (ホールB7(1))

座長:藤田博曉(埼玉医科大学 保健医療学部理学療法学科), 太田博明(日本骨粗鬆症学会理事長/山王メディカルセンター女性医療センター)

[TS-11-1] 健康長寿に不可欠な運動器の健康―骨粗鬆症マネージャーとしての理学療法士に期待するもの―

太田博明 (日本骨粗鬆症学会理事長/山王メディカルセンター女性医療センター)

わが国は少子高齢化により2005年に高齢化率世界一となり,2007年には21.5%と世界初の超高齢社会を形成し,直近の高齢化率は25.1%と約3,000万人の高齢者を抱えている。このような社会構造における最大の課題は高齢者の医療・介護費の軽減に加え,健康寿命の延伸と健全老化を図ることである。
健康寿命を阻害する主な疾患は,悪性腫瘍,心血管イベント,骨粗鬆症を中心とする運動器疾患である。この中で運動器疾患は最大の介護要因であり,寝たきりや生命予後にも直結する。運動器疾患の中心をなす骨粗鬆症は女性では生涯に3人に1人以上が椎体骨折を,また5人に1人以上が大腿骨近位部骨折を来す。骨粗鬆症治療の基本は,適切な栄養素の摂取と運動の励行のもと,薬剤介入による長期的管理にある。これらによって骨粗鬆症の重症化の予防,骨折や再骨折の予防がなされる。食事療法,運動療法,薬物療法の中で最も普及が十分でないのが運動療法である。そこで,日本骨粗鬆症学会ではより専門性を有する認定医制度のスタートを予定しており,骨粗鬆症リエゾンサービスとの連携によって,骨粗鬆症に関する最適な医療を誰もが享受できることを目指している。
運動療法による骨密度上昇や骨折予防効果は多くのRCTを解析したsystematic reviewおよびメタアナリスによるエビデンスがある。さらに背筋強化は椎体骨折予防に重要で,筋力とバランス練習を中心とした運動は転倒,ひいては骨折予防に有用である。しかし,これらの運動処方は具体性に乏しく,経験に基づくことが多いので,今後は医師・理学療法士間のシームレスな連携による運動療法を主とした医学的リハビリテーションの下に,骨密度や筋力アップ,転倒予防などの標準的な運動療法の確立が望まれる。理学療法士資格を有する日本骨粗鬆症学会認定の骨粗鬆症マネージャーの実践に即した育成と臨床現場での活用が急務であり,わが国の骨折減少に寄与することを期待したい。