第50回日本理学療法学術大会

講演情報

合同シンポジウム

日本骨粗鬆症学会 合同シンポジウム6

超高齢社会における骨折予防の重要性と理学療法士の役割

2015年6月6日(土) 15:00 〜 16:50 第3会場 (ホールB7(1))

座長:藤田博曉(埼玉医科大学 保健医療学部理学療法学科), 太田博明(日本骨粗鬆症学会理事長/山王メディカルセンター女性医療センター)

[TS-11-2] 骨粗鬆症治療の実際―検診,検査,治療の現状と課題

細井孝之 (日本骨粗鬆症学会理事/健康院クリニック)

骨粗鬆症とそれによる骨折を予防することは,超高齢社会においてますます重要性を増している。骨粗鬆症診療の出発点である診断を行うためには脆弱性骨折の原因となる病態や疾患に関する鑑別診断・除外診断を行った上で,骨に関する評価を行う。現時点で骨強度を定量的に評価する上で骨密度測定値はもっとも有力な指標であるが,それ以外の骨強度規定因子が存在することも事実である。そこで注目されるのが,既存骨折の有無である。2012年版の診断基準では,閉経後女性および50歳以降の男性においていずれも50歳以降に大腿骨近位部または椎体に脆弱性骨折があった場合には骨密度測定の結果を問わず骨粗鬆症と診断することになった。一方,大腿骨近位部骨折および椎体骨折以外の脆弱性骨折(前腕骨遠位端骨折,上腕骨近位部骨折,骨盤骨折,下腿骨折,または肋骨骨折)があった場合には,骨密度が若年成人平均値(YAM)の80%未満であることと合わせて診断する。まだ骨折がない場合は骨密度がYAMの70%以下で診断することは変わらない。医療機関における骨粗鬆症の診断をうけるきっかけはさまざまであるが,骨粗鬆症性骨折が発症していない段階で受診し,初発骨折を予防する機会を提供する仕組みとして骨粗鬆症検診に期待が寄せられる。しかしながら,受診率は非常に低く,近年行った全国調査によると骨粗鬆症検診に対する取り組みには自治体ごとに大きなばらつきがあることが明らかになっており,検診体制に関する抜本的な見直しも必要であろう。
骨粗鬆症治療薬は骨折予防効果に関するエビデンスを備えたものが普及しその活用が勧められるが,骨粗鬆症患者における薬物治療率や薬物治療継続率が低いことが課題となっている。この現状に対して幅広いメディカルスタッフが関与するチーム医療で取り組めるよう,日本骨粗鬆症学会では骨粗鬆症リエゾンサービス事業を展開している。