第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム7

パラリンピックへの期待と理学療法士の役割

2015年6月7日(日) 09:40 〜 11:00 第2会場 (ホールC)

座長:秋田裕(神奈川県理学療法士会), 石塚和重(筑波技術大学 保健科学部保健学科)

[TS-13-2] パラリンピックの発展と理学療法士の役割

中森邦男 (日本パラリンピック委員会事務局長/日本障がい者スポーツ協会)

第2次世界大戦後のイギリスで,戦争で負傷した脊髄損傷者に対するリハビリテーションに,スポーツを取りいれたことで,体力の回復,維持及び向上,また健康の回復,維持及び増進とともに,練習やトレーニングによる競技力向上,精神力の強化,仲間意識の醸成,強くなるための課題を克服したときの達成感などの効果により,障がい者の自立や社会参加につながった。
パラリンピックは,多くの障がい者にスポーツが支持され,回を重ねるごとに障がいの種類,競技数,参加国数及び参加選手数が増加し,東京2020パラリンピック競技大会には,22競技4350人と170以上の国が参加するとされている。当初車いす選手から始まったパラリンピックに,切断,脳性まひや知的障がいの選手が含まれていくとともに,その競技性は回を重ねるたびに高くなってきた。2001年に国際オリンピック委員会と国際パラリンピック委員会が,オリンピック招致にパラリンピック開催を含むことが記された合意文書が交わされたことで,パラリンピック主催国をはじめとする国が,国を挙げての選手強化を実施し,強豪国によるメダルの集中化が顕著になっている。
このようにパラリンピックが大きく発展してきた背景に,理学療法士がかかわる内容は大きく三点あげられる。ひとつは,先天性の障がい児の療育や事故後の障がい者に対する身体運動の日常化であり,運動が日常活動を生き生きとさせ,その先にスポーツ参加があげられる。より正しい動きの習得とその継続を支援することによって,その後の人生に好影響があると考えられる。
二つ目は,パラリンピックスポーツの基盤であるクラス分けである。障がいによる各関節の筋力やその可動域,又は中枢神経系障がいの運動の協調性を正確に診断し,これを基にした競技毎の競技力の区分であり医学的な資質が要求される。
三つ目は,障がい者スポーツ特有の車いすや義足などの使用で,その用具は日々進歩している。特にスポーツ用義足は,男子走り幅跳びで8m24cmを記録するなど,オリンピックと比較しても遜色ないものとなっている。スポーツ用義足は,選手の筋力や跳躍テクニックによりその強度を変えたり形状を工夫したり,また,日々の練習時にもソケット部分の改良などの必要が生じる。
このように,医学的資質を要する理学療法士が,スポーツ経験があるにこしたことはないが,スポーツを通して障がい者の社会参加や自立の支援を行うフィールドは幅広い。