第50回日本理学療法学術大会

講演情報

大会シンポジウム

大会シンポジウム8

動物に対する理学療法

2015年6月7日(日) 09:40 〜 11:30 第3会場 (ホールB7(1))

座長:信岡尚子(シモゾノ学園国際動物専門学校 理学療法学科)

[TS-14-3] 動物に対する理学療法の実際

藤澤由紀子 (埼玉動物医療センター)

近年,獣医学の発展,治療技術の向上に伴い動物の理学療法に対して大きな関心が向けられるようになってきたが,実際に動物の理学療法を実施している動物病院は全体のおよそ1割にも満たない。その中で理学療法士が所属しているのは数施設であり,実際には獣医師,動物看護師が中心になって実施されているのが現状である。
獣医学領域の関連職種は,獣医師・動物看護師・トリマー等である。人を対象とした医療では,複数の国家資格所有者がチームを組んで患者の診療にあたる。そして各専門職の業務内容は法律で定められており,法の範囲内で医師の処方の下で診療に関与する。しかし,獣医療における動物の診療は獣医師の独占業務である。近年,動物看護師については,国家資格化にむけた動きがあるが,現在は民間団体の認定資格であり,その業務に法的根拠はなく,他職種も民間の認定資格であるため,いずれも動物病院において直接的に診療に関与することは出来ない。理学療法士が動物病院に勤務する場合も同様で,理学療法士の国家資格を持っていても獣医師でない者は動物への診療を行ってはならない。しかし,獣医療の高度化が進み,術後の動物の健康管理,機能回復,また高齢動物のケアあるいは運動能力維持などを目的として,動物の理学療法へのニーズが高まっている昨今,将来的には理学療法の専門知識と技能とがますます重要になると思われる。
理学療法士が人を対象とした医療と同じように動物の診療に関与するには,法的整備が必要となる。理学療法士が獣医療に参画していく場合,他の関連職種間との連携や相互理解は必須である。そして,何よりも留意しておくべきことは,いかなる動物の理学療法についても獣医師を基軸にして展開されることが必然的なことであり,理学療法の専門職であるとはいえ,獣医療分野では素人であることを忘れてはならないと考えている。