第50回日本理学療法学術大会

講演情報

大会シンポジウム

大会シンポジウム8

動物に対する理学療法

2015年6月7日(日) 09:40 〜 11:30 第3会場 (ホールB7(1))

座長:信岡尚子(シモゾノ学園国際動物専門学校 理学療法学科)

[TS-14-4] 動物に対する理学療法の実際

依田綾香 (セントラル動物病院)

日本の獣医療に「リハビリテーション」もしくは「理学療法」という言葉がでてきて約10年が経ち,獣医師にもその必要性が認識されつつあり,飼い主からの要望も高まっている。現在の動物リハビリテーションを行っている多くの獣医療者は米国で学び,それをもとに我が国で実践しているが,米国と日本での対象症例は大きく違っている。米国はリハビリテーションの対象になるのは狩猟犬やスポーツドッグが多く,機能障害が残りその犬が役割を果たせない場合はほとんど安楽死の対象となる。そのため,米国の犬は機能障害の程度は日本より低いが,運動機能はヒトでいうアスリートレベルを求められる。一方,日本の動物は多くは伴侶動物であり,例え重度の機能障害が残っても安楽死になることはないため,重度の機能障害をもちながらも伴侶動物としての日常生活が送れることが目的となる。そのため,米国で行われている理学療法(特に運動療法)は我が国の理学療法の対象症例には運動強度が高く,リスクも高くなり,不適応と思われることが多いが,理学療法評価がきちんと行われていないため,実際には不適応と思われる理学療法が多く行われているのが実際である。
動物では運動学などの基礎的なことが十分にわかっておらず,理学療法評価でも「動作分析」という言葉さえでてきていない。このような中で動物に理学療法を実施していかなければならないのは非常に苦悩が多いが,私は獣医師として獣医療に従事しながらヒトの理学療法を学ぶ機会を頂き,ヒトと動物,医療と獣医療という違いはあるが,理学療法士は理学療法の基礎知識を有する専門職種であるので,ヒトで得た知識を動物の中でも応用可能であると感じている。理学療法士と獣医師の両方の立場からみた,動物に対する理学療法の実際について症例を含めて紹介したい。