第50回日本理学療法学術大会

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合同シンポジウム

日本集中治療医学会 合同シンポジウム7

早期リハビリテーションを安全かつ確実に行うために

Sun. Jun 7, 2015 11:40 AM - 1:30 PM 第2会場 (ホールC)

座長:眞渕敏(兵庫医科大学病院 リハビリテーション部), 小幡賢吾(岡山赤十字病院 リハビリテーション科)

[TS-15-4] 早期リハビリテーションの効果をどのように示すか?

飯田有輝 (海南病院リハビリテーション科)

近年の治療戦略の発展により,intensive care unit(ICU)で治療される重症患者の生存率は飛躍的に向上した。ICUにおける治療効果の指標にも変化がみられ,目指すべきアウトカムが生存率から生活,そして健康関連QOLへとより個人の主観に立脚した概念へと進展しつつあり,長期予後や社会復帰率も評価の対象となっている。
一方,人工呼吸管理を必要とする重篤なICU患者では,筋力低下を主体とした機能障害であるICU acquired weakness(ICU-AW)やICU由来のせん妄が高率に合併し,退院後も身体・精神機能障害が遷延すると報告されている。ICU-AWの発生要因には,敗血症のような重症疾患や人工呼吸管理中の安静臥床,深鎮静による長期間の精神不活動,および薬剤性因子などが挙げられている。したがって,端的に要因のひとつに介入するのみではICU入室患者の予後改善は見込めない。
現在,気管挿管された人工呼吸管理中のICU患者に対する,鎮静覚醒トライアルや呼吸器離脱トライアル,鎮静・鎮痛薬の選択,早期運動療法を組み合わせたABCDEバンドルの実践が医原性リスク低減戦略として提唱されている。また,本邦においてもJ-PADガイドラインが作成され,鎮痛鎮静プロトコールの有用性とともに早期リハビリテーションがせん妄管理において有効であり,予防目的に早期離床を図ることが根拠を持って示されている。
ICUにおける早期リハビリテーションの実行可能性が示されるようになって久しいが,患者管理の一端を担う術として包括的なリハビリテーション体制,ならびにリハビリテーションマニュアルが十分に整えられた施設は多くはない。早期リハビリテーションは単に廃用症候群からの脱却だけではなく,疾病予防効果や予後改善効果をもたらす優れた介入策のひとつとして位置づけるには,今後この分野におけるさらなる実績と学術的研究を基にした明確なマニュアルの構築が必要である。