第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム9

街づくりにおける理学療法士の役割―自助・共助の街づくりは人づくり―

Sun. Jun 7, 2015 11:50 AM - 1:40 PM 第1会場 (ホールA)

座長:古名丈人(札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科)

[TS-16-1] 超高齢社会時代への医療パラダイムシフト

高林克日己 (三和病院)

これからの日本が超高齢社会時代,人口減少社会に向かうことはよく知られるところだが,現実にそこで起こるであろうことを理解し,どのように対応すべきかを考える人たちは未だ少数である。しかしこのままのスピードで変化すると2110年には日本の人口は半減すると予測され,全国の半分の市町村の人口が50%以上減少することになる。一方で死者の数は2030年には150万人を超え,そのうちの80%以上が75歳以上の高齢者で,死者の多くは天寿を全うした人たちとなる。今までと同様に彼らの多くを病院で看取るとすれば,総人口が減少する中で病院はこうした高齢者で満床になるだろう。このような多死時代には医療は変革を要求され,今までと異なった医療パライダム(医療の社会的枠組み)を構築しなければならないが,それ以前に医療を超えた,社会通念,価値観,死生観までの変革があるべきだろう。人生を全うする人たちにとって,死をタブー視せずどのように迎えるかの考え方はホスピスと相通ずるところがあり,イギリスを中心に広がりつつある。死を軽視することなく,尊厳のある晩年において個人が望む最善の生き方を選択できるようにするには,高度の最新医療を行うこととは別な意味での高度の判断が必要になる。
また高齢者の増加により今後爆発的に増えるであろうロコモーティブ症候群を抑止するために,個々の介護度を上げないような予防医学が在宅や施設におけるリハビリテーションの重要性を高まることは疑いようがない。医療だけでなく,コミュニティの再形成そのものの中で,理学療法士を含めた各医療職がどのような連携をもって対応していくかを考えるべき時代になっている。