第50回日本理学療法学術大会

講演情報

大会シンポジウム

大会シンポジウム12

理学療法の未来 クロージングシンポジウム―これからの理学療法の可能性への挑戦―

2015年6月7日(日) 15:20 〜 16:40 第2会場 (ホールC)

座長:長澤弘(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部リハビリテーション学科), 山田千鶴子(専門学校社会医学技術学院 理学療法学科)

[TS-19-1] 運動障害の分析法とそのアプローチの展望について

大畑光司 (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻理学療法学講座)

中枢性運動障害を持つ患者の動作を評価することは運動療法介入の方向性を決定する重要な手順である。近年、定量的な運動解析機器を用いた多くの知見が報告されており、個別の運動における疾患特性や動作特性が明らかになってきている。しかし、臨床現場では日常的に大掛かりな運動解析機器を用いることは難しく、仮にそのような機器を用いたとしても、問題となる運動指標を明確に定めなければ、臨床的有用性は低い。臨床現場において、様々な病態を呈する中枢神経疾患の動作の異常性を定量的に解釈する運動指標は定まっておらず、運動分析やその解釈の多くは、経験に基づく定性評価によって行われている。一般に三次元動作・運動解析などの指標を見る場合、単一の関節ごとの角度変化や角速度、関節モーメントなどの変化を問題にすることが多い。運動の問題点の主体が個別の関節の運動にある運動器疾患の場合は、そのような関節の運動を中心にして、運動を考察することが可能である。しかし、中枢神経疾患の動作・運動障害をとらえる場合には、単に関節の運動変化としてではなく、多関節運動である個々の動作・運動課題の特徴を抽出して数値化する必要がある。単関節の運動(運動範囲や角度のピークなど)のみに着目すると、問題の中心となっている動作特性(不安定性や効率など)を見落とす可能性がある。つまり、運動器疾患と中枢神経疾患の運動学的解釈は、因果関係の考察の仕方が異なるといえる。中枢神経疾患患者においては全体的な運動に生じている問題点を見据えた後で、その問題が単一の関節の運動にどのように影響を与えているかを考えるべきであろう。そのような考え方に基づいて、本講演では中枢神経性運動障害を対象として運動を分析する場合にその異常性を把握するために用いられる評価方法とその解釈について供覧し、今後の運動評価や理学療法について展望する。