会長挨拶
日本麻酔科学会 第64回学術集会開催にあたって
この度、日本麻酔科学会第64回学術集会の会長を拝命しましたことを心から感謝いたしますとともに、一言、ご挨拶を申し上げます。第64回学術集会の会期は2017年6月8日〜10日の3日間を予定しております。本来であれば金沢で皆さんをお迎えしたかったのですが、会場の都合上、神戸での開催となります。新専門医制度元(幻)年であった2016年の福岡は、1会場のみ少し離れた場所にあったため、参加者には多少、混乱があったと伺っております。その点、神戸は全ての会場が徒歩圏内ですので、スムーズな運営ができるものと確信しております。
日本における学術研究活動の沈滞が懸念され始めてからから、長い時間が経とうとしております。麻酔科領域におきましても、日本発の英文論文数が劇的に減っただけでなく、研究不正の領域において未だに全世界を賑わせております。謹厳実直、恥などの文化を有する日本人にとって、これは極めて辛い事実です。そこで、なぜここで英語?というツッコミがあることを承知で、今回の学術集会のテーマを「Will」としました。「Will」には意思、決意、意欲、願いなどの意味があります。学術集会において、明日に向かって進む私どもの強い意思を示していきたいと考えております。
本学術集会では、いくつかの新しい取り組みをいたします。第1に、最近、海外からお招きした演者の講演に、聴衆が極めて少ないことが問題にされておりました。私どもが麻酔科学を学び始めた頃は、日本語で書かれた良質な本が数少なく、私どもは英語で書かれた本を、辞書を片手に読まざるを得ない状況にありました。今は日本語で書かれた本が巷に溢れておりますので、日本という有難い国に感謝する同時に、若者から英文の医学書に親しむ機会を奪ったこの国を恨めしく感じております。そこで本学術集会では、海外からお招きした演者の講演には同時通訳をつけることとしました。また、海外からの演者にはシンポジウム等にも加わっていただき、相互交流が図れるようにしていきたいと考えております。第2に、Pros and Consやパネルディスカッションを多く取り入れるようにして、結論は一つではない、研究をする余地はたくさん残っているんだ、ということを聴衆に示していきたいと考えております。
日本麻酔科学会は学術集会において、国籍や資格に制限を設けておりません。世界中のどの国からでも、会員資格の有無を問わず、麻酔科学や周術期医療の発展に寄与すると評価された研究ならば、発表することが可能です。それが日本麻酔科学会の発展に寄与し、さらには日本発の良質な研究を増やすことに繋がると考えているからです。学術集会が成功するかどうかは、偏に参加する皆さんの心意気にかかっております。多くの皆様が本学術集会に興味を持たれ、参加してくださいますことを心より希望しております。