2025年度 人工知能学会全国大会(第39回)

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[4O2-OS-29a] デジタル人文学とAI

2025年5月30日(金) 12:00 〜 13:40 O会場 (会議室1010)

オーガナイザ:大向 一輝(東京大学),嘉村 哲郎(東京藝術大学),亀田 尭宙(人間文化研究機構),中村 覚(東京大学)

12:20 〜 12:40

[4O2-OS-29a-02] 深層学習を用いた中世アラビア語翻訳者推定モデルの構築

医学カリキュラム『アレクサンドリア集成』を例に

〇澤 裕章1、塚越 柚季2、大向 一輝2 (1. 東京大学大学院総合文化研究科、2. 東京大学大学院人文社会系研究科)

キーワード:多言語テキスト分析、思想・歴史・文学研究におけるAIの応用

『アレクサンドリア集成』は、古代ローマの医学者ガレノスの著作16点を、アレクサンドリアで医学教育のために選抜・翻案したテキスト群である。従来、『集成』は9世紀アッバース朝時代の翻訳活動で活躍したフナイン・イブン・イスハークによる翻訳と見なされてきたが、フナイン自身が作成した翻訳書リストに含まれておらず、実際の翻訳者をめぐり長年にわたり議論が続いている。本研究では、『アレクサンドリア集成』のアラビア語翻訳者を特定するためのモデルを構築した。KITABプロジェクトに掲載されているフナインおよび同時代の複数の翻訳者による翻訳テキストを基に学習データを作成し、翻訳者の分類を試みた。学習データのラベルにはフナインを含む3名の翻訳者と、その他の翻訳者を設定した。モデルの検証結果では、翻訳者が既知の文献について、フナインによる翻訳を最大82.5%の確率で判定した。『集成』のテキストについては、85.6%の確率でフナイン以外の翻訳者による翻訳であると推定された。本結果は、従来の翻訳者帰属に疑問を投げかけるものであり、従来の初期イスラーム医学におけるギリシア医学受容の様相を再考する必要を示している。

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