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[IIYS-01] 熊本系褐毛和種集団の遺伝的特性
褐毛和種は和牛四品種の一つであり,黒毛和種と比較すると,BMSは低いが赤身肉が多く,近年注目されている品種である.この褐毛和種を対象とした遺伝学的研究は数が少なく,その遺伝子構造には不明な点も多い.本研究では黒毛和種で経済形質に対する効果が確認されているEDG1, SREBP-1, SCD, FASN, LYST, F11の優良アリル頻度を褐毛和種集団と黒毛和種集団で比較した.SCD, FASN, NCAPGでは褐毛和種集団でより高い優良アリル頻度が確認された.一方,EDG1, SREBP-1の優良アリル頻度は黒毛和種集団で高かった.また,F11の発症アリルが褐毛和種集団で多数検出された.次いで,1990年代の褐毛和種集団と2018年の褐毛和種集団の優良アリル頻度を比較した.現在の集団ではSCDの優良アリル頻度は中程度増加していた.しかし,F11の発症アリル頻度は約8倍増加していた.現在の集団に対し,種雄牛ごとに解析を行ったところ,このF11発症アリルの増加には種雄牛Aが大きく関与していることが分かった.種雄牛Aの産仔はSCD, FASN, NCAPGの優良アリルが他の種雄牛の産仔と比べて高頻度であることから,種雄牛Aが優れた経済形質を保持していたためF11発症アリルが拡散したと考えられる.